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2016/08/24 05:52  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

債券と株の関係


おはようございます。

先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

投資家が収入を必要とする時、伝統的には、貯蓄口座や債券に投資する。また、それは安全な投資であると考えられてきた。その一方で、株式投資は、長期的なキャピタル ゲイン(値上がり益)を目的とするものと見なされてきた。

しかし、この考えはやや短絡的であり、過去の20年間においてアメリカの株式投資では、半分以上の利益は株の配当によるものであった(キャピタル ゲインが主たるものではなかった)。特に、今の株式市場は、アメリカだけでなく、イギリス、日本においても、そのようになっていない。 つまり、株式の配当の方が10年国債の利回りよりも高いのである。特に、イギリスと日本の株式の配当は10年国債の利回りよりも2%以上の高いが、これはアメリカのように株の買い入れ消却によって配当利回りが高くなったわけではない。

1980年代から1990年代に投資を経験した投資家にとって、現在の状況は非常に奇異に映る。と言うのも、通常は10年国債の利回りは株式の配当よりも高い。代わりに、株には高いキャピタル ゲインを期待することが出来たからである。例えば、2003年にイギリスで一時的に株の配当が10年国債の利回りよりも高くなった時期があった。その際、投資家は「これは株の絶好の買い場である」と言って株に飛びつき、その結果、株式市場は急激に上昇した。しかし、2008年以降、イギリスや日本において同様の状況が起きても「お買い得」と言うようなことにはならなかった。

金融の歴史において、債券と株式の関係は常に変化をしてきた。1950年代までは、株式の収入(キャピタル ゲイン+配当)は債券の利回りよりも高かった。 理由は、株には株価下落リスクがあり、景気後退期には多くの企業が倒産したからである。よって、1930年代から1940年代の機関投資家はその資産の多くを債券に投資していた。

しかし、1950年代半に入ってからは、彼らは積極的に株式投資を始め、世界恐慌(1930~1940年代)の教訓は忘れ去られていった。特に、1960年代から1970年代にかけての世界的なインフレ期にあっては、債券投資は「悪い投資」であり、代わりに熱狂的な株式投資の時代がやってきた。

こうした債券と株式の間での投資の変化は、言葉を変えれば経済のファンダメンタルズの変化でもあった。そして2008年以降、先進国がディスインフレと低成長の狭間でもがき苦しむことになると、債券投資が株式投資よりも好まれるようになった。 ただ例外的に2009年の春以降、アメリカの景気が低迷する中、アメリカ株が上昇したのは、企業収益がGDP対比より高かった事と賃金がより低く押さえ込まれた事がその背景にあった。 しかし、世界の株式に分散投資しているファンド マネージャーにとっては、この時期にあっても日本株が1989年の高値から半分以下の水準に留まっていたため、引き続き苦労した。

更に、監督官庁の規制のルールが変わることによって、彼らの投資態度も変わってきた。 新しく導入された生保や年金に対する規制によって債券投資に仕向けられると、これまでは株価が大きく下落した際には必ずと言っていいほど買っていた彼らはもう買わなくなり、熱狂的な株投資家にとって彼らの重要な追随者を失ってしまった。

また、中央銀行が債券市場において大きなプレーヤーとなり、債券と株の関係が変化してしまう。こうしたケースの多くは、債券市場の利回りがマイナス金利にまで追いやられ、これを見た市場関係者は「株式が割安と言うよりも、債券価格が異常なまでに割高である」と物議をかもしている。 確かに彼らの考えは正しい。 しかし、日本の投資家は、過去20年以上に亘っていわゆる「Window maker:見かけ倒し」と言われる非常に割高な債券を買い続け、特に2008年以降は、債券利回りは非常に低い利回りで推移しているが、投資家は、この債券の利回りをもってして(株が割安だと判断して)株式投資をすることに警戒すべきである。 つまり、債券の利回りだけを見て「株価が債券の利回りよりも低い水準になるまで上昇する」とあてにしてはいけない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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