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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2016/03/30 05:37  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

夏のダブル選挙は日本だけではない?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに、オーストラリアのマルコム ターンブル首相が、今年の夏にも、下院上院のダブル選挙に打って出る可能性について記事を書いていましたので、ご紹介したいと思います。

オーストラリアは、基本的にはイギリスやアメリカと同じように2大政党政治を行っていますが、昨年9月にマルコム ターンブル氏が前任のトニー アボット首相を首相の座から放り出して自らが首相となりましたが、上院では小さな政党が乱立し、こうした小さな政党がキャスティング ボード(法案の可否)を握っており、現政権の法案成立の障害となっています。 そこに加えて、昨年9月に首相の座を引きずるり降ろされたトニー アボット氏とその仲間たちが、現政権の政策遂行に陰から(オーストラリアの議会では、バック ベンチャー(議会の後方席)から)横槍を入れています。

現政権が、これまでやろうとした政策課題は、消費税を現在の10%から引き上げて、その一方で、所得税を引き下げることを検討していましたが、これが国民から不評を買ってこれに関連する法案を引っ込めざるを得ない状況になっています。 更には、オーストラリア国民の3分の3が支持している同性愛者の結婚についても、首相になる前までは推進の立場から、(首相就任後は)その方針を引っ込めてしまいました(保守政権である自由党が同性愛者の結婚を認めることは同党支持者から理解が得られない)。

こうしたチグハグした政権運営のおかげで、彼の支持率は、政権成立当初は60%もありましたが、現在は39%と下落し、逆に野党労働党は37%まで支持率を上げ、誰が首相にふさわしいかの世論調査でも、労働党の党首との差が一気に縮まってしまいました。

そこで、彼は、現状を打開すべく7月2日の上院下院同時選挙という策に打って出ようとしています。勿論、彼には、勝算あっての決断ですが、一部には「完全に狂気の沙汰」と指摘する議員もいます。

英誌エコノミストは、最後に「マルコム ターンブル首相は、オーストラリア国民に彼の主張する『これまでの(悪しき)政治文化を変えることができるのは自分だけである』と言う事を、選挙を通じて説得する必要がある」と、やや皮肉を込めて述べています(これまでも多くの政治家が同様の事を言ってきたが誰もできなかった)。

実は、今年の夏から秋にかけて、イギリスのEU離脱を巡る国民投票、ドイツの地方選挙、日本の衆参同時選挙(可能性)、オーストラリアの両院同時選挙(可能性)、そしてアメリカの大統領選挙と、政治的に大きく動く可能性を秘めています(ですが、その一方で、誰にでもわかる大きなイベントのある時期の金融市場は、得てして話題ばかりが先行して、実際には身動きできないことが多いのです)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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