2016/03/25 05:16 | 昨日の出来事から | コメント(0)
インフレをどうやって把握するか?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
経済学的には、インフレは極めて単純な概念である。しかし、価格の上昇を把握することは非常に困難な作業である。 まず初めに統計学者たちは、これを調査するスタッフに調査のための商品をリストアップし、これをどのような割合で買うかを決めなければならず、更には、これを定期的に何度も何度も繰り返さなければならない。そして、最後に、彼らは新しく出た商品について、これらが物価の上昇に対してどう影響を与えるかを考慮しなければならない。
一方で、最近よく言われるビッグ データは、こうした作業を極めて簡単にしてくれる。
例えば、アメリカのCPI(消費者物価指数)の測定には、スタッフを店に行かせ、実際に購入し、これを記録しなければならない。また、購入する商品のバスケットは3年程度で更新しなければならない。これは、今や、オンラインで殆ど全てのものが買える現代社会にあって非常に面倒なことである。
これに対して、テクノロジー会社 Adobe は、自らのソフトを使って実際にオンラインで買い物をしてデータを集め、これによって大量の物価に関するデータが得られる。例えば、アメリカのトップ500社の4分の3にあたる小売会社に対してオンラインで買い物をしたデータをデジタル プライス インデックス(DPI)として蓄積して公のインフレの数値に対抗している。
このDPIの優れた点は、CPIが8万品目の価格を追跡しているのに対してDPIは140万の商品の価格を追跡している。しかも、広告価格ではなく、実際に購入した価格なのでその正確性に優れている。また、人々が価格動向いよって買う商品がどう変わったかを知ることもできる。
しかし、DPIでは、オンライン以外の価格、例えば、ガソリンの値段や家賃については捕捉できない。その点で、DPIが現在のCPIにすぐにとって替わることはなさそうである。
しかし、DPIのデータとCPIのデータを比較することで、CPIが色々と見過ごしている点もわかってきた。 例えば、コンピューターやパソコンの価格は、CPIでは1年間に7.1%下落しているのに対して、より正確な価格動向を示すDPIによれば13.1%も下落し、テレビも同様にDPIはCPIより価格が下落している。 つまり、テクノロジー関連の80%の商品が、実は、CPIの価格下落の速度よりも早く価格が下落しているのである。
もし、この現象が経済全体で起こっているとするならば、実際のインフレは、公に発表されているインフレよりも低くなり、人々は借り入れを先送りし、手元の現金を保有することをより選択することになる。また、この考えに従えば、実際のGDPは、公に発表されているGDPよりも低い可能性が大きい(消費が正確に計測される一方で、インフレが過大評価されている為)。
英誌エコノミストは、最後に「勿論、CPIもより正確な計測に向けて努力しているが、彼らの計測手法がビッグ データ(DPI)に遅れを取るようであれば、公のCPIは民間の競争(DPI)に取って替わられるかもしれない」と述べています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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