2016/03/11 06:10 | 昨日の出来事から | コメント(0)
マイナス金利と生保
先々週の英誌エコノミストに掲題に関する記事ありましたのでご紹介したいと思います。
中央銀行がマイナス金利を導入して、まず、直接的に影響が出るのは当然のことながら銀行ですが、その次に大きな影響を受けるのが生命保険です。
何しろ、彼らのポート フォリオの80%近くを債券で運用しており、その債券の利回りがマイナス金利の導入によって債券価格が上昇するのは結構なことですが、その後の新規の運用先の利回りが大幅に低下して、ヨーロッパの生命保険お4分の3近くは契約者に利回りを保証している利回り(4%程度)を大きく割り込み、いわゆる逆ザヤで苦しんでいます(全資産28兆ドルの内の21兆ドル)。 台湾の生保では契約者に対して保証している利回りは4~5%と非常に高く、問題となっています。 また、ドイツの生保でも最大で4%の利回りを保証しています。
そこで、生保は、本来は負債(保険の契約)と資産(債券)のデュレーション(平均残存年数)を一致させるのがポート フォリオとしてはリスクが最も少なくて理想的なのですが、これでは逆ザヤを確定させるだけですので少しでも高い利回りを求めてより残存期間のより長い国債に投資し、生保によっては14年もデュレーション ギャップがあるところもあります。 また、生保によっては、債券(国債)の替わるよりリスクの高い社債や株式投資に走る生保もありますが、しかし、それでは、今度はそれらの投資に見合う資本金を引き当てる必要があり、それによってソルベンシー マージン比率(保険金の支払い余力を表す比率)が下がってしまいます。
こうした八方ふさがりの状態から脱却するために、今、生保が行おうとしている経営戦略は、他の保険会社(生命保険ではない保険会社)を買収して投資効率を上げる、もしくは、新規の契約を受け付けない、更には、利回りに頼らない新しい保険を開発する等など色々と手を打っていますが、一方で契約者のニーズは長期に亘るリターン(配当)を得ることであり、うまく機能していません。
それでも、生保は銀行よりはマシで、銀行ほど差し迫ったリスク(マイナス金利導入によるリスク)に対して経営が脆弱ではありません。何故ならば、生保の資産は流動性の高い金融資産が大半を占め、その一方で、負債は、疾病や怪我、あるいは死亡と言った確率的に予測できるリスクだからです。
また、銀行と違って、一晩で支払い不能になることもありません。金融的見地からいえば、生保が支払い不能になるには、数年単位もしくは10年単位でなるとされています。また、監督官庁も、生保が支払い不能にならないようバーゼルIIIなどによって支払い余力の確保を支援する手助けをしています(すべては、時間的に余裕がある事が大きい)。
しかし、ムーディーズは、「(そんな時間的に余裕のある生保でも)ドイツの生保の多くは、現在のマイナス金利の状態が長く続けば、大きく棄損する可能性があると指摘しています(金融緩和政策の限界がここにも表れ始めています。にもかかわらず、昨日、ECBは政策金利をマイナス0.4%に引き下げました)
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。