2016/02/18 06:03 | 昨日の出来事から | コメント(0)
今後、アメリカの個人消費は低迷?!
世界の金融市場の不安定な状態が続いています。特に、最近は今後のアメリカ経済が個人消費の低迷を背景に失速するのではないかとの懸念が出ています。 先週号の英紙エコノミストに、これに関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
まず、結論から言えば、「アメリカの個人消費は引き続き堅調であり、今後もアメリカ経済を下支えする」と英誌エコノミストは強気の姿勢を示しています。
2016年1月29日に発表された2015年第4四半期のアメリカのGDPは僅かに年率+0.7%と大きく失速しました。
これについて、多くのエコノミストは、「アメリカの消費者はガソリンが大きく下落したにも関わらず、それをドライブなどの消費に回さずに貯蓄している」と指摘しています。確かに、アメリカの消費者は、2014年には可処分所得の4.2%(USD2500)をガソリン代に使っていましたが、2015年は2014年に比べて3分の1減少しています。 つまり、インフレ調整後で、可処分所得の2.7%しかガソリン代には回していなかったのです。結果として、その分は銀行の貯蓄に回り、貯蓄率は2014年の4.8%から5.2%に上昇し、215年12月だけを見れば貯蓄率は5.5%と過去3年で最も高い水準となっています。
しかも、アメリカの個人の貯蓄は、2008年のリーマンショックの前に借り入れをし過ぎたことに懲りて、現在は非常に健全で、個人の借り入れを差し引いた純資産は年収の6.3倍を保有しています。 また、借り入れをしている人の返済状況も、リーマンショック前の所得対比13%から、低金利のおかげもあって所得対比10%程度まで下落しています。
にもかかわらず2014年のアメリカのGDPが+2.4%に留まったのは、一つ目には、原油採掘などの設備投資が大きく減少した事であり、2番目は通貨高(米ドル高)によって輸出が伸び悩んだ為であって(GDPに対して-0.9%の寄与)、個人消費が低迷したわけではありません。 その証拠に個人消費はGDPに対して+1.5%も寄与しているのです。
では、「最近の世界的な株価下落の影響をアメリカの消費者は大きく影響を受けているのではないか?」との疑問を持たれる方もいると思いますが、アメリカの家計の内、14%の家計が株式投資をしていますが、その一方で、全く株式投資をしていない家計は45%に上るのです。 勿論、毎日のニュースで株価が大きく下落するとセンチメントして弱気になることも予想されますが、彼らの関心は、寧ろ「雇用が確保されるか」、あるいは「賃金が上昇するか」、そして「今は安い原油価格が再び大きく上昇することはないか」と言った事なのです。
結論として、英誌エコノミストは「2015年第4四半期のGDPが低迷したのは、この時期が暖冬でしかも雨が多かった気象要因が大きい。 この時期には暖房代を多く支払う事もなかったし、雨が多かったために外食が控えられ、レストラン消費は1.7%も減少している。よって、通常の気候になれば(そして金融市場が落ち着けば)、家計の財布の紐は再び緩んでくる(wallets should reopen)」と述べています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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