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2016/01/29 05:52  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

年初の株価急落は、「弱気へのピクニック」?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに今年に入ってからの世界的な株価急落に関して「弱気へのピクニック」と題した記事がありましたのでご紹介したいと思います。

2016年は、過去20年間で最悪の年明けとなった(日本株は、戦後始まって以来、年初来6営業日連続で下落)。
世界的な投資家ジョージ ソロスは、「現在の中国の金融環境は2008年(の世界的な金融恐慌)を思い出させる」と発言している。 また、アメリカの前財務長官ラリー サマーズ氏はFinancial Timesの中で「世界的な経済リスクがアメリカの国内景気動向次第にかかっている」と指摘し、「ヨーロッパやエマージング マーケットは、これまでで最も大きなリスクにさらされている」とコメントしています。

確かに、2015年に入ってから今年にかけて、アメリカの国債とハイ イールド債のスプレッドは、200bp以上も拡大し、エマージング マーケットの通貨と株価指数は軒並み25%以上下落し、特にロシアを中心として船舶出荷指数(Baltic Dry Index)はそのピーク時の3分の1近くまで急落しています。 

今、世界の投資家の懸念の第1番目は「中国の実態経済は、中国政府が発表する景気指標よりももっと悪い」ことにあります。今日における中国経済の動向は世界経済にとって大きなウエイトを占めており、今後、中国経済の悪化は、2016年の世界経済が更に減速することを意味しています。 特に、前述のジョージ ソロスは「中国やエマージング マーケットで急拡大している貸し出しの増加は2008年の世界金融恐慌とそっくりである」と指摘しています。 成長が減速すれば、借り手は債務の大きさに返済が困難となり、アジアのエマージング国の企業の多くはドルで借り入れをしていますので、景気減速による自国通貨の下落は返済を困難なものにします。 そこへ、中国人民元が急落すれば、それにつられて自国通貨が更に下落する可能性があり、一層返済が困難となります。

次に、世界の投資家が懸念していることはアメリカ経済の動向です。2015年12月のFRBは、アメリカ経済の底固さを理由に2006年以来初めて政策金利を引き上げましたが、その一方で、アメリカ経済はそれほど景気が良くないとの指摘があります。アトランタ連銀の試算によれば、2016年第1四半期の米GDPは、年率で僅かに+0.8%に留まる見込みで、足元のPMI(Purchasing Managers Index)も、景況感の良し悪しの分かれまである50ポイントを2か月連続で割り込んでいます。

更にこれに関連する懸念材料としては、「世界経済が各国中央銀行による超低金利政策に依存し過ぎていること」にあります。確かに、超低金利政策によって、世界経済をデフレに陥れることから回避できましたが、その一方で、そのことが元の成長率に経済を引き上げる阻害要因にもなっており、更には、一部の資産価格の上昇によって、格差の拡大をも引き起こしている。 また、根本的な問題である債務の多さは何も変わらず、結局のところ、民間の債務が国などの公の債務に付け替わっただけであり、かつて言われていた「通常金利(3~4%)」に戻すことは、いまや不可能となっています。

英誌エコノミストは「恐らく、年初来の急落は、「(中国を含めた世界の)中央銀行がこれまで行ってきた政策に対するコントロールが効かなきなってきていること、もしくは、投資家が、これまで中央銀行が行ってきた政策に対する信頼が揺らぎ始めたことの現れではないか」と述べています。

故に、今年に入って、超弱気のストラティジストで有名なソシエテ ジェネラルのAlbert Edward氏のセミナーがロンドンで開催され、そこにはこれまでで最も多い850名の投資家が集まり、その中で、彼は「Fedと、ふしだらで媚びへつらうだけの他の中央銀行が、2008年の世界金融恐慌に匹敵もしくはそれを回る10年規模の金融危機の環境を醸成している」と指摘し、「世界恐慌と広範囲にわたるデフレが現在進行中である」と述べています。

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