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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2016/01/27 05:55  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

通貨安でも輸出が伸びないのは何故?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

これまでも英誌エコノミストで各国の為替を比較に際しては独自の手法(Big Mac index: マクドナルドのビッグ マックを買う為のコストをドルに換算したもの)で行ってきましたが、これによれば2016年1月6日現在で、ロシアのルーブルが対米ドルで69%も割安となっています。また先進国ではユーロが同じく19%安く、日本円は37%も安くなっています。

また、最近では資源国通貨が世界的な資源価格の下落によって売られ、オーストラリア ドルは対米ドルで24%、ブラジル リアルで同32%、そして中国人民元は同16%割安となっています。

これまでの経験則では、通貨安になるとその国の輸出が増える傾向にあり、 IMFが1980~2014年における主要国60か国の通貨と輸出の関連を検証したところ、通貨が10%安くなれば、輸出がGDP対比1.5%増加する傾向があることがわかっています。

しかし、最近の通貨安は、必ずしもこれ当てはまらなくなってきています。特に、私たちの通貨「円」は2013年には対米ドルで20%安くなり、2014年には37%の安くなっています。 にもかかわらず数量ベースの輸出は殆ど変りません。IMFの計算によれば、現在の日本の数量ベースの輸出額は、円安によって本来増えるべき水準よりも20%は低いと見ています。こうした傾向は、南アフリカやトルコでも同様の傾向が見られます。

その一方で、ブラジルやオーストラリアでは、通貨安によって輸出が伸びている国もあります。例えば、ブラジルではブラジル リアルが22%下落した事で輸出が10%増加し、オーストラリアでも豪ドルが24%下落した事で輸出が6%増加しています。

では、こうした国々による違いはどこから来るのでしょうか?
IMFと世界銀行は「通貨安にもかかわらず、その国の輸出のパフォーマンスが弱いのは、世界的なサプライ チェーンの広がりのせいである」と指摘しています。 つまり、グローバリゼーションによって、多くの国の製品がその国の生産過程に入り込み、そして組み立てられ、その後、輸出されているために、通貨安の恩恵が相殺されているのです。 IMFは「日本の輸出不振はこのせいである」と指摘し、世界銀行も「通貨安によって輸出が増加するインパクトの40%はこれによって相殺されている」と試算しています。 

最後に英誌エコノミストは「このこと(グローバリゼーション)が、先進国を苦境に陥れている」として述べています。
つまり、長年にわたって円高による業績悪化に対応するために行ってきたことが、今度は円安によってその恩恵が相殺されてしまう形になっているのです。 ですが、その一方で、企業にとっては、為替変動による企業業績の変動リスクを減らすのは当然なのです。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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