2015/09/29 05:30 | 昨日の出来事から | コメント(0)
人口問題が経済や政治に与えるインパクト
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
今、世界の先進国で少子高齢化が進んでいることは誰でも知っている事であるが、しかし、これの意味するとこを本当に知っている人は少ない。
Morgan StanleyとCharles Goodhartが、先日、発表したレポートによれば、この少子高齢化はそれぞれの国の経済に、インフレ調整後の実質金利を引き下げ、 実質賃金を押しつぶし、更には、人々の格差を拡大せる、といった3つの点に劇的な影響を与えるとレポートしています。
まずインフレ調整後の実質金利を引き下げる影響についてですが、戦後の労働市場において、これまで2度にわたり、労働者の大量供給が起こりました。 その一つ目が、戦後のベビー ブーマーたちが1970年頃に成人になって労働市場に参入した時期であり、2つ目は、1990年以降の中国の市場開放によってアジアに大量の労働力が、更には1989年のベルリンの壁の崩壊によって東ヨーロッパの安い労働者が大量に供給されました。 こうした安い労働力が供給された時期には、企業家は技術革新によって生産性を上げるよりも、安い労働者を使い、あるいは、工場を中国や東ヨーロッパなどの現地に移し、そこで安いコストで製品を安く供給することが出来ました。 その結果、マクロ的には世界経済全体にデフレ圧力がかかり、先進国の中央銀行は政策金利を引き下げに走り、その一方で低金利によって供給された資金が資産に向かって資産価格が上昇し、いわゆる持つ者と持たざる者の格差が広がる結果を生んでいます。
そこに、高齢化社会によって、高齢者は若い頃に貯めてきた貯蓄を取り崩しますので、投資は減少し、一方で、企業家は、低い経済成長の下では収益率が低下する為、設備投資により慎重にならざるを得ません。
更に、家計部門において高齢者は、若い頃に子供たちと一緒で暮らした大きな家を高齢者になったからと言って、それを手放して老人夫婦用の小さな家に買い替える事を躊躇います。 一方で、現役世代の家計にとってみれば、適正な価格で家を取得することができません(高齢者から見ると大きな家は非効率であり、現役世代から見ると、家の供給が少ないために割高な家を買わざるを得なくなる)。
また、企業側では、生産性の低い労働者を高賃金で雇用を確保するよりも、ロボットやコンピューターを使う方がコストも安く効率も上がります。 結果として、スキルの低い労働者は労働市場から排除される、もしくは、より安い賃金でも働かざるを得ない状況に追い込まれます。
結果として、こうした苦境に追い込まれた人々の不満は、右傾化、左傾化によらず政治に関心が向き、一気にその国の政治が不安定になりかねないと英誌エコノミストは締めくくっています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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