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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2015/09/15 06:00  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

中国株下落の教訓


おはようございます。

先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

今、世界の市場関係者は今回の中国の株価下落を次の3つの観点から懸念している。
1つ目は、中国経済そのものについてです。 中国株式市場の中国GDPに対する割合は15%程度で、それほど大きくありませんが、今回の中国の株価の下落を受けて、世界の株価市場が過剰に反応し、8月だけで5兆ドルもの価値が株式市場から吹き飛んでしまいました。 その一方で、中国経済により大きな影響があるのは、むしろ中国の不動産市場であり、その割合はGDP対比で25%以上を占め、更には、不動産には銀行のローンが深くかかわっている為に不動産市場の影響は中国の銀行システムにまで影響を与えます。 

とはいっても、中国経済が低迷したからと言っても、統計の信憑性についての議論の余地はありますが、中国経済は6%台で推移しており、現在の中国の1年物の金利は4.6%もあります。したがって中国人民銀行は、その気になれば市中金利を引き下げることで景気を刺激することができます(この点は、既にゼロ金利政策をとって、これ以上、金融緩和政策をとれない先進国とは大違い)。 しかし、その一方で、市中金利を引き下げると、中国から資本が海外に流出するリスクが高まり、中国当局はその点に警戒を強めています。

2番目の懸念は、エマージング各国への影響です。 今回の中国経済の失速や中国株式の暴落がアジア周辺国へ悪影響を与え、1997~1998年のアジア通貨危機を思い出させますが、ASEAN各国は前回の通貨危機の教訓から、外貨準備を一定量確保する事や通貨危機に際してお互いに資金を供給し合う仕組みを構築しており、以前のような通貨危機になる可能性は低いのです。 更に、 ロシア、ブラジルをはじめとした資源輸出に依存していた国々の景気後退は、今年に入って始まったのではなく、既に、2010年頃からその兆候は出ていました。 また、先進国にとってみれば、アメリカの中国に対する輸出の割合はアメリカのGDPの1%にも満たない一方で、ドイツを始めとするヨーロッパの国々の中国への輸出の割合は格段に高いのです(日本の中国に対する輸出の割合は20%以上もあり、その影響は、先進国の中でもバラつきが大きい)。

3つ目の懸念は、これまで続いて世界的な株価上昇が終わってしまったことです。今回の中国経済の失速と、中国株の下落の影響は、グローバルに展開する企業に少なからず影響を与えます。例えば、アメリカのS&P500社の売り上げの48%はアメリカ国外の売り上げであり、これまでの一連の米ドル高によって、これらの企業の収益環境は厳しさを増しています。更には2009年以来続いてきた株価上昇によって、PER(Price-earnings ratio)は、過去の長期的な平均値を上回って割高に推移しています。 こうした事から、今回の株価下落によって、より実態に合った株価への調整が進む可能性があるのです。

こうした事を踏まえて、英誌エコノミストは「(除くアメリカの)西側諸国の政治家にとって、金融政策、財政政策による更なる景気刺激策の余地はほとんどない。 その一方で、アメリカは政策金利を引き上げる過ちを犯そうとしており、このこと(政策金利を上げさせること)は他の先進国の責任でもある」と指摘して上で、「金融政策は、景気刺激の初めの第1歩に過ぎない。 そして、西側、東側の国を問わず、景気回復に本当に必要なことは、金融改革や規制改革、更にはインフラ整備によって、それぞれの国の生産性を上げるしか他にないのである。それこそが、今回の中国の株価下落によって我々が学んだ厳しい教訓なのである」と締めくくっています。

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One comment on “中国株下落の教訓
  1. パードゥン より
    英誌はグチャグチャで論理がわからんです

     アメリカは内需だけでまかなえると言っているので
    海外からの利益から国内利益へシフという内需国の本来の
    姿に戻るだけのように思いますが?

     課題はこれをスムーズにやれるかどうかで、
    中国が米国債を一気に売って、金利上昇とかいうことが
    おきないようにすればよいだけのようです

     英誌は自国のための弁舌をふるっているだけのように
    思えてきました

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