2015/07/09 06:14 | 昨日の出来事から | コメント(3)
神経経済学からみたバブルの崩壊の仕組み
中国株が暴落しています。
中国株は、2011年から2014年半ばにかけては2,000ポイント台で取引されていましたが、2014年11月に外国人による株式売買が自由化されて海外からの資金が流れ込み、そこに不動産バブルが弾けて行き場を失っていた投資資金が株式市場に流れ込み、更には2015年4月には個人投資家の口座開設が400万件になるほど個人投資家の資金が大量に流れ込み、2015年6月には一気に5,000ポイントまで急上昇しました(2011年の安値2,000ポイント近辺から2.5倍以上)。 当時の株価が明らかにバブルの様相を呈していることはこのコーナーでもご紹介しました(6月5日の昨日の出来事「中国バブルの行方は?!」をご参照ください) 。
そこへ中国政府が株式市場のこれ以上の過熱を抑制する政策を打ち出したことを受けて、中国株式市場は一転して下落し、その後は僅かに3週間余りで30%以上も暴落し、中国の株式市場のみならず世界中の株式市場が混乱しています(とはいっても、現在取引されている3,500ポイントは気配値に過ぎないとはいえ、それでも2011年の安値である2,000ポイントより高い水準で取引されています)。
さて、1980年代に私たちは土地バブルと株式バブルを経験し、今回、中国でも同様の土地バブルと株式バブルとその崩壊を目の当たりにし、この「バブル」の仕組みについて、私が最近読んだ本の中に非常に興味深いことが書かれてありましたのでご紹介したいと思います。
それは、人間の脳の仕組みから、投資に関する行動パターンを分析するもので、その本によれば「例えば、株価が立て続けに2回、1ペニーずつ上昇するというような刺激を2回繰り返すと、人間の脳は自動的に、無意識に、しかも制御不能に、3回目も繰り返す事を期待する」と指摘しています(バブル発生の仕組み)。
次に、バブルによって地価や株価が急上昇する過程では「投資で儲かっている人の神経活動は、コカインやモルヒネでハイになっている人のそれ(神経活動)を区別がつかないほど似ている」と述べています。 私は、コカインやモルヒネをやった事がないので、これらの陶酔感を比べることはできませんが、バブルによって異常な高値まで値段が上がる陶酔感は、これらの陶酔感と同じ脳の刺激だそうです。
そして、バブルが崩壊する過程では「金銭的な損失は、死の危険に反応するのと同じ脳の部位で処理される」(すなわち、投資家が暴落に巻き込まれてお金を失う恐怖心は、死の恐怖心と同じなのです)
(「あなたのお金と投資脳の秘密、神経経済学入門、 ジェイソン ツヴァイク著 日経経済新聞出版社より」)。
この本によれば、バブルの発生と、それに陶酔して異常なまでに価格が強化されるプロセス、そして、それが反転して暴落するプロセスは、人間の脳の仕組みから来るものであり、古今東西、世界中のどこでも起こりうることであり、そして誰にでも当てはまる事なのです。つまり、バブルは、ある種、だれも避けて通る事のできない人間の脳(あるいは「人間の性」)からくる一つの経済現象なのです。
では、そうした事を踏まえて、私たちはこれ(バブル崩壊)にどう対処すればいいのでしょうか?
それは、同書によれば「2度バカなことをしないことである。 1度目のバカは買ってしまったこと、2度目のバカはそれを売らなかったこと(損切りをしなかった事)である」と述べています(1度目のバカは仕方ないとしても、2度目のバカは避けることができる!)。
私は、今回の中国株の暴落を見ていて、この教訓を改めて自分自身に言い聞かせています。
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3 comments on “神経経済学からみたバブルの崩壊の仕組み”
maehashi にコメントする コメントをキャンセル
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すごく共感できたのでコメントしてしまいましたが、
前橋さんはこの陶酔感にどう対処されているのですか?
自分は運用金額が年々大きくなってきて、
まだたいしたことはないのですが
現実味がないというか感覚が掴めずフワフワしており、さらにそれが
上昇するとさっぱり意味がわからなくなります。
今回の暴落も先週に現金化して回避し、(ここの読者なら当然ですね)
陶酔感が半端ありません。
自分はスーパーでお得な缶コーラ59円を買う喜びを忘れないようにしています。
大切なのは常にクール、謙虚であれということなんですかね?
いつもお世話になります。
はい、若い頃の僕は、人一倍、陶酔感に浸って大変でした!(爆笑)
ひどい時には「相場は、自分の予想通りに動く!」とか、「もうこれで相場は完全にわかった!!」と豪語し、極めつけは「僕の相場予測と売買能力は、ついに神の域に達した!」とまあ、手が付けられないくらい、有頂天になったものです(今から思えば、本当にお恥ずかしい限りです)。
ですから、itea 様が、「陶酔感が半端ありません」と言うのもごもっともで、極めて自然なことなのです(ましてや、まだお若いのであれば)。
ですが、相場って不思議なもので、相場で儲かって有頂天になり、陶酔感に浸っていると、それを見透かされたように、その後は、相場の神様からそれは厳しいしっぺ返しを何度も、何度も受けたものです。
そして、この相場でうまくいった陶酔感と、その後のしっぺ返しを何度も何度も繰り返すうちに、相場でもうまくいっても、それほど大きな陶酔感に浸ることもなくなり、逆に、損をしても「死の恐怖を伴うような損」もしなくなってきます。
そこで、ここからはitea様のご質問に対する私なりの考えですが、私に言わせれば、相場でうまくいって陶酔感に浸ることはとてもいいことなのです。 是非、ひと時の陶酔感を楽しんでください(つまり成功体験を積むことは非常に大事なことなのです)。
ですが、その一方で、今日のブログの中でも書きましたが、「追いつめられて死の恐怖に襲われる前に、必ず損切る事も忘れまい!」と心に言い聞かせればいいのです。 ただ、それだけです。
後は、こうした経験を積むことで、itea様なりの相場に向き合う「距離感(陶酔感と損切りのバランス)がきっとできてくると思います。
今後とも、ご一緒に頑張りましょう!
前橋
長文のコメントありがとうございます。
自分は当初、投資金額が5分の1になり、うんざりして放置していましたが、
アベノミクスにより復活し底から四年で約20倍になりました。
たしかにあの時の喪失感が自分を冷静にさせてくれます。
前橋さんの海外紙のリポートいつも楽しみです。
学生時代に社会学の先生が海外の高級紙と日本のマスコミのレベル差を
教えてくれてからいつもチェックしています。
グッチーポストもJDさんやぺルドンさんが加わりさらに盛り上がってきましたね。
これからもよろしくおねがいします!