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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2015/06/30 06:28  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ギリシャのデフォルトとGrexitの後は?


おはようございます。

読者の皆様もご存知のように、先週末にギリシャのチプラス首相がEUからの支援内容を受け入れるかどうかについて国民投票を7月5日に行うことを議会に提案し、議会はこれを承認しましたが、これに対し、EU各国は「交渉当事者であるチプラス首相が、その交渉責任を国民に挿げ替えるものであり、到底受け入れられない」として反発し、ギリシャ支援を6月30日以降は継続しないことを決定しました。 これを受けてギリシャ政府は、29日以降の銀行業務を停止し、ATMからの預金引き出し限度額を1日60ユーロ(8,000円程度)までとすることを発表しました。これによってギリシャは6月30日のIMFへの借り入れ返済原資がなくなり、デフォルトする可能性が一気に高まっています。

そして、昨日、週明け後のシドニー市場の為替取引ではユーロが対円で一時的に133円台まで下落し、また、米ドルも対円で122円台まで売られました。 更に、アジアの株式市場においても軒並み3%前後まで株価は大きく下落しています。

さて、今回、ギリシャがデフォルトする可能性については、これまでも何度もその可能性が浮上していましたので、金融市場である程度は織り込まれてきた事なので、私も含めて市場参加者の多くは「確かにデフォルト報道が出た瞬間は多少の乱高下はあっても、それが長く尾を引くことはない」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

しかし、これに対し、英誌エコノミストは「今回のギリシャのデフォルトとEUからの離脱問題は、人々が考えている以上に大きな影響がある」とし、「特に、この問題がギリシャ一国に留まるだけでなく、他の周辺国までその可能性が拡大した時にはとてつもなく大きなものなる」と指摘しています。

まず、ギリシャ一国の影響については、現在のギリシャの借金(国債発行残高)はGDP対比で180%(金額にしてEU317bn:日本円で約41兆円)であり、2020年までの毎年の支払金利額はGDP対比で3%と、財政改革次第では何とか金利を返済することが可能な水準あった。 にもかかわらず、今回、ユーロからの支援が打ち切られ、ギリシャがユーロ離脱をするとなれば、論理的にはギリシャ政府は新しい通貨(ドラクマ?)を準備しなければならない。 この点が、同じ財政破綻危機でも、自国通貨を持っていたアイスランドと大きく違います。

この新しい自国通貨を発行する為の準備期間は早くても6~12か月かかり、その間、ギリシャ政府はIOU(借用書)を発行して通貨の代用をする必要があります。これによってギリシャ経済が更に混乱し、ただでさえギリシャのGDPが2010年以来20%も縮小し、賃金も16%低下している上に、今回の新しい通貨発行までの過程で、更に経済が縮小し、賃金が下落する可能性がある。

問題は、こうした経済的混乱に乗じて、政治的にはネオ ファシスト(Gordon Dawn)や共産主義者が台頭する可能性があり、場合によってはクーデターが起こる可能性も否定できない。 事実、先週には現ギリシャ政権はロシアのプーチン大統領と接触をしており、ギリシャが一層の混乱と腐敗に陥る可能性が大きくなっている。

加えて、今回のギリシャのデフォルト問題が、他のユーロ周辺国(例えばポルトガルやキプロス)に拡大する可能性も否定できない。 こうした懸念があった故に、EUとしては、借金を返す能力のないギリシャをこれまで約5年間に亘り、支援をし続けてきたのである。 しかし、2015年のギリシャ総選挙で現在のチプラス政権が誕生した事で、全てが悪化の一途をたどり、今回の事態に至ってしまった。

今回の事態を受けて、英誌エコノミストは「今後のギリシャの行く末は、まず、ギリシャが債権者である他のEU加盟国からの信頼を回復させることが出来るかどうかにかかっている。 ギリシャ国民はユーロに留まる事を希望しているにも関わらず、ギリシャの政治家は、自分たちの借金の事を棚上げにして、ベルリン(ドイツなどの債権国)からの救済を当て込んでいる。 まずはギリシャがこうした態度を改めない限り、もうEUからの支援はない」としています。

私たちは、今回のギリシャ デフォルトそれに続くユーロ離脱問題が、ギリシャ一国の問題に留まるかどうかを見極める必要がありますが、現時点でこれを見極めることは非常に困難です(と言いますか、現状では予測不可能です)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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