2015/06/23 05:34 | 昨日の出来事から | コメント(0)
次の景気後退の備えが出来ていない世界経済
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2015年に入って、IMFは今年の先進国の経済成長率は2%を超え、アメリカは政策金利の引き上げる見通しであると予測している。 確かに、ヨーロッパでは、これまでのデフレ傾向から物価に底打ち感が出始め、アメリカ経済は、第1四半期は予想外に景気が失速したが、ここにきて再び上向き始めている。また、日本も第1四半期の成長率は年率で3.9%と高い伸びを示している。
しかし、その一方で、IMFはギリシャの財政問題、更には、かつてはBricsと持て囃されたブラジルやロシアの経済成長がマイナスとなり、中国経済も事前の予想以上に景気が減速するといった不安要因を抱えていると指摘しています。
こうした世界経済の背景には、先進国では2007年のリーマン ショック以降に財政赤字残高が各国平均で50%以上増大し、特に、イギリスやスペインに至っては倍増している。 この財政赤字に関しては、何処が天井なのかはっきりさせることは不可能であるが、いずれにせよ、次の景気後退期には、財政出動の余地は非常に限られてきている。
また、金融政策に関しても、世界の先進国の金利水準は殆どゼロ金利で推移しており、 例えば、現在のイングランド中銀の政策金利0.5%は17世紀以来の低い水準であり、今後、景気が後退するような事態になっても、もう金融政策を発動することができない(政策金利の下げ余地がない)。
理論的には、これを正常化する為には、財政赤字を縮小して次の景気後退期に財政出動できる余地を確保すべきであり、金融政策においても出来るだけ早く政策金利水準の正常化を図る必要がある。 しかし、こうしたアプローチはことごとく失敗した(2000年の日本におけるゼロ金利解除の失敗、2011年のECBの政策金利の引き上げの失敗等)。
これに対し、「では、次の景気後退期に備えて先進各国の政府の出来ることはもうないのか?』と言えば、英誌エコノミストはそうではないと指摘し、「それは、これまで恥ずかしい程までに手つかずであった社会の仕組みに対する投資をすることである。 具体的には、様々な規制緩和と労働市場改革である。市場を開放して企業マインドを刺激し、更には様々な雇用形態の自由化によって人々を失業から解放することが最善策なのである。この両者の改革こそが次の景気後退期のショックに対する最善の方法である」と述べています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。