2015/05/12 05:55 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ギリシャのユーロからの離脱は不可避?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
これまで英誌エコノミストは、一貫してギリシャのユーロからの離脱は避けるべきであるとの主張をしてきましたが、 ここにきて、現在のギリシャ政権(Syriza)がこれまでの彼らの主張に対して降参しない限り、ユーロからの離脱はもう避けることができないと指摘しています。
その理由は、まず第1に、現政権がこれまでユーロの債権国から財政支援を受ける代わりにギリシャの財政再建を遂行するために必要な信頼関係を完全に潰してしまった事が挙げられます。 第2にユーロ加盟国は、2010年にギリシャの財政破綻危機が発覚し、2012年以降は財政支援を行う傍らで、しかるべき時(ギリシャが財政破綻)に備えて既に準備をしてきたことが挙げられます。 そして、第3には、政治的にユーロの財政支援国がこれ以上ギリシャの財政支援を継続することは、もはや財政支援国の国民の理解を得られなくなりつつあることが挙げられます(財政支援を受けているスペインですらこれ以上のギリシャ支援に難色を示しています)。
では、「もしギリシャが財政破綻をした場合、ギリシャがユーロから離脱が簡単にできるか?」と言えば簡単ではありません。 まず、現在、ECBがギリシャの民間銀行に流動性を供給する名目で大量の利金を供給していますが、ECBがこれらの資金を撤収することで自らがその後の経済混乱の悪者に仕立て上げられることを嫌っています。また、大手格付け機関も、デフォルト宣言に加担することでその後の金融訴訟に引っ張り出されることを嫌っています。
しかし、その一方で、ギリシャが財政破綻をすると、ギリシャ国債の価値は更に大きく棄損し(ECBが保有しているギリシャ国債の担保価値が大きく棄損し)、更には、ギリシャの銀行に預金を預けている預金者が預金引き出しに殺到してECBは更なる資金の供給を迫られます。
こうした事態を避ける方法としては、一時的に、政府が預金者に(IOU:借用証書)を発行して、預金者の現金引き出しを先送りする方法がありますが、その一方で資本(資金)の国外持ち出しを制限する必要があります(そうしないと、IOUを発行しても資金の国外流失を止めることができません)。かつて、キプロスがユーロから離脱することなく、この方法を取ったことがありました。 しかし、これを遂行するためにはユーロとの共働が欠かせません(キプロスの時は、ユーロが協力しましたが、ギリシャでもユーロが協力するか不透明)。
最後に英誌エコノミストは「ギリシャがユーロから実際に離脱した際には、(1)通貨ユーロと新しいギリシャ通貨の2つの通貨を流通させる必要があること、(2)ギリシャからの資本流出を規制する必要がある事、(3)現金保有者の救済といった問題に取り組まなければならず、今のギリシャの置かれている状況は、デフォルトとユーロ離脱との紙一重にいる」と指摘しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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