2015/03/25 05:29 | 昨日の出来事から | コメント(1)
エマージングの国々を直撃するドル高?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたんでご紹介したいと思います。
ご存知のように米ドルはここ3か月の間に通貨バスケット ベースで11%上昇し、過去1年間では22%も上昇しています。
この背景には、読者の皆様もご存知のように、米国経済の好調さがあって(IMFの予測では2015年のアメリカの経済成長率は3.6%)、FRBは2006年以来9年間続けてきた量的緩和政策の圧縮を進め、ユーロや日本がいまだに量的緩和政策を推進する中、政策金利の引き上げも視野に入れようとしているからです。
このように現在の米ドル高のメカニズムは極めて単純ですが、その一方で、その米ドル高の影響はそれほど単純ではありません。 BISの報告によれば、2008年のリーマン ショック以降のアメリカ国外のドル建てのローン残高は、それ以前に比べて50%も増加し、今や9兆ドルに膨れ上がっています(ひとえにアメリカの金融緩和政策のおかげで安いドル建てローンが実行しやすかったため)。
その内、リーマン ショック以前にはアメリカ国外のドル建てローン残高の3分の1を占めていたエマージングの国々のドル建てローン残高が、現在はその全体の半分を占めるまでに増大し、特に、中国のドル建てローン残高は2008年には200bnドルでしたが、現在は1兆ドルまで膨れ上がっています(日本円にして約120兆円)。 更に厄介なことに、ドル建てローンの元本が自国通貨対比で増加して負担増になることに加えて、アメリカの政策金利引き上げ期待が出てきたことで支払金利までも上昇し始め、ドル建てローンを保有している企業はローンの元本増と支払金利増のダブル パンチを受ける形になっています。 更にかつてはBricsと言われたエマージング市場の代表格ブラジルとロシアが今や厳しい不景気の真っただ中にあり、中国も不動産バブルが弾けて景気の失速が鮮明となっています。
このような米ドル高の悪影響ばかり指摘すると、これに対する反論がいくつか出されるかもしれません。 その一つ目は、「確かに、豪ドル高で企業の債務の負担は増えるかもしれないが、その一方で、本業の輸出もドル高なので、そちらで儲かる筈だ」との指摘があります。 しかし、こうしたドル建てのローンを組んでいる企業の多くは、原油や鉄鉱石などの鉱山資源の輸出企業が多く、昨年来の世界的な原油の暴落や鉱山資源価格の暴落で、本業の売り上げが非常に落ち込んでおり、本業はドル高だからといて儲かっているわけではありません。
2つ目には、「エマージングの国々の通貨が米ドルに対して下落したのだから自国通貨ベースの国内産業の輸出は国際価格競争力がついて輸出が増大するはずだ」との指摘がありますが、現状はそれほどうまくいっていません。と言うのも、こうしたエマージングの国々の輸出相手国がアメリカだけならそうした議論は成り立つが、実際には、こうした国々の貿易相手国の多くはアメリカ以外の国であり、必ずしも米ドルに対する自国通貨安がそのまま貿易相手国との交易条件の改善には直結しないのです。
3つ目には、「エマージングの国々に蓄えられた米ドル建て外貨準備金の価値が、米ドル高によって価値が上がるからいい事ではないか」と言った議論もあります。 確かにロシアやブラジルのように外貨準備を保有している国々もあるが、その一方で、南アフリカやトルコのように外貨準備金が枯渇している国々もあり、こうした国々はドル建ての短期の政府債務の調達に奔走しています。
英誌エコノミストは最後に「これまでのアメリカの量的緩和の圧縮のプロセスの中で、エマージングの国々は苦境に追い込まれている。そこへ、アメリカが更なる米ドル高政策を推し進めれば(政策金利を引き上げれば)、 世界は再び危機に陥る可能性がある」と警告しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “エマージングの国々を直撃するドル高?!”
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買ってはいけない通貨も、いずれは買い時が来るはずという質問をしたかったのです。
ブラジル、トルコ、ロシア、いずれ買い時は来ますか?
テキトーにお答えください。
(笑)