2015/01/08 05:31 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ユーロの次なる危機
今週号の英誌エコノミストに「ユーロの次なる危機」と題して、今回のギリシャの政治的リスクに関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存知のように、また、昨年末に「昨日の出来事」のコーナーでもご紹介したように、ギリシャの連立与党がこれまでの経済改革の実績を背景に突然大統領選挙に打って出ましたが、結果は最終投票でも大統領選出に必要な票を獲得できずに議会は解散することになり、1月25日に総選挙が行われることになりました。
これまで政権を担ってきた政権与党としては、増税と公的年金の削減、政府のサービスの削減と公務員の削減等の厳しい財政改革と労働市場改革によって今年に入って景気は底打ち、2014年第3四半期にはユーロ圏内で最も経済成長率の高い国にまで経済が回復してきたことを実績として訴えています。 また、現政権は、EUやIMFからの様々な条件を付けられた財政支援を受ける代わりに金融市場から資金を調達することによって自国の財政面での自立を回復しようと努めてきました。
しかし、その一方で、国民の間では現政権がこれまで推し進めてきた財政改革政策に対する根強い反感があります。 と言いますのも、今年に入って景気が回復してきたといっても、現在のギリシャのGDPの水準は、2012年のそれに比べて20%も下回ったままですし、失業率も26%程度と非常に厳しい状態が続いているからです。
そこへ急進左派政党が「EUに留まることを基本にしながらも、EUやIMFから財政支援に付帯している様々な条件を破棄し、かつての政治を復活させる」ことを掲げ、これによって国民から大きく支持を得て次の選挙では大きく議席を獲得する可能性が出てきています。 こうした国民から人気を取る為だけの政党(人気取り政党)の動きは、ギリシャの急進左派の動きに留まらず、スペインでも同様の動きが出ています(こちらは右派政党)。
これに対して、EU各国、特にドイツは「約束を守らない国がEUに留まることはできないし、既に、我々は以前と違ってかかる事態(ギリシャがEUから離脱する事態)になっても、その影響が限定的になる為の対応をしてきた」とギリシャの急進左派の主張を牽制しています。
こうした厳しい発言の背景にあるのは、現在のEU各国の経済的体力が2012年のギリシャの財政破たん危機当時に比べて相当悪化してきていることが挙げられます。 EUの盟主ドイツの経済成長率は1%程度ですし、EU全体の経済成長率もほとんどゼロに近い状態で、いずれの国においても怠け者(ギリシャや南欧周辺国)にこれ以上、自分たちの税金を投入することに反対する声がこれまで以上に高まっており、EU各国としても、更にこれらの国を支援し続けては自らの政権維持すら危ぶまれるのです。
英誌エコノミストは「2015年のユーロにとっての最悪のリスク(EU崩壊のリスク)は、EUの政治家の背後に存在する。 今回(2014年12月)のギリシャの選挙ではEUの政治家の期待(財政改革を推進する連立与党が政権を担い続けるだろうとの期待)は、未熟であったことが分かった。 しかも、ここにきて国民の人気取りの政党(左派、右派を問わず)が、EUの多くの国でその勢いを増している。 皮肉にも、こうした動きは景気がようやく回復してきたときに限って、それまでの改革に不満を持つ人に付け込む人気取り政党が勢いを増してくるのである。 このことの意味合いをドイツもギリシャもよくよく留意する必要がある。」 と締めくくっています(英誌エコノミストは、今、ドイツはギリシャの人気取り政党を牽制しているが、ドイツにおいても、いずれドイツの景気が回復し始めた時、ギリシャと同じように自国内で人気取り政党が台頭する可能性があることを暗に指摘しています)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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