2014/10/17 14:42 | 昨日の出来事から | コメント(1)
中国の非生産的な生産
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
これまでの中国の経済成長には目を見張るものがあった。 たとえば2013年の中国のGDPは9,5兆ドルで、それは2007年のそれのほぼ3倍にあたるからである。 しかし、経済成長は単に資本と労働は増加するだけで達成されるものであろうか? また、これまで中国はTFP(total factor productivity:いわゆる効率)を伴って経済成長をしてきたであろうか?
一般的に、経済成長だけをするのであれば必ずしも効率を勘案する必要はない。つまり、設備と労働を投下し続ければ、生産性が落ちてもGDPを増加させることができる。 しかし、この類の経済成長は長くは続かない。 何故ならば、労働力も投下できる資本も無限ではないからである。 つまり、限られた労働と資本を効率よく使ってこそ、長期的に持続可能な経済成長が実現できるのである。
今、中国経済についてもっとも悲観的な見方を示すエコノミスト(Harry Wu氏)の試算によれば、2007年以降の中国経済は、年率で僅か0.9%の成長しかなく、 もっとも楽観的な試算をしている世界銀行ですら2000年から2010年までのTFP勘案後の中国の経済成長は3%に留まり、その結果、1997年から2012年までの期間の生産性は1.5%しか上昇していない。
経済学的な生産性については、同じ会社に働く2人の労働者を比較してどちらがより生産するかを見極めることは非常に困難な作業であるが(よく言われるリンゴはリンゴ)、最終財の違いを比べることで(Robert Solowによるソロー 誤差(Solow residual)によって)2人の生産性の違いを計測できるようになった。
中国の経済成長にとって問題なのは、こうした生産性のリサーチによって、今のところは辛うじてプラスを維持しているかもしれないが、趨勢として生産性が劇的に低下していることである。世界銀行の調査によれば、中国の労働と資本の分配率や、政府公的企業と民間企業の比率は、その生産性決定要因の90%の割合を占めているが、そのほとんど全てを中国共産党が独占している為に生産性を大きく後退させているのである。
そこへ、更に生産性を悪化させる要因がある。 それは、貸し出しと投資の決定も、生産性とは全く反対の相関関係(negative correlation)をともなった中国共産党によってなされているのである。その為に、経済成長1%に必要とする資本の割合(ICOR: incremental capital-output ratio)は、1992年~2011年の平均値3.6ポイントから2012年には5.4ポイントに急上昇している。 ちなみに日本や韓国、それに台湾のICORは2.7~3.2ポイントであり、いかに中国の生産性が低いかがわかる(同じ製品を作るのに、より多くの資本を必要とすることがわかる)。
こうした結論は決して驚きに値しないし、中国共産党もこれまでの鉄鋼や繊維産業に対するOver capacity(過剰設備)を警告し、より生産効率を上げるよう促してきた。 しかし、結局のところ、生産能力を高めることは、生産効率を高めるより容易なので、なかなか生産効率への移行ができていないのが今の中国の現状なのである。
資本効率がここまで悪化すると、もはや中国製品は世界の市場価格競争に勝てないことを意味します
そういえば、最近、めっきりMade in Chinaを見なくなった気がします。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
One comment on “中国の非生産的な生産”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
生産能力の高さ・・
経済効率・・反比例・・
共産党危機・・比例・・
頭・・理解・・
体・・動かず・・
老齢化現象・・・(笑)