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2014/08/19 16:32  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

あるべき金利水準とは?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

今、世界の金融界で言われていることに米FRBによる国債の買取り削減(いわゆるテーパーリング)が終了した後は2015年に米国政策金利が引き上げられるとの議論がされている。 しかし、問題は「政策金利が引き上げられるとして、一体、どこまで金利は上昇するのであろうか」ということである。

この問いに対する一つのアプローチとして、過去の米国の平均的な金利水準を見てみると、21世紀に入ってからの平均的な金利水準は2.96%であった。 その一方で1990年代のそれは5.15%と21世紀以降の平均的な金利水準に比べて2倍以上も高い金利水準であった。 そして、現在、金融市場で取引されている(織り込んでいる)5年先の金利水準はどうかというと、それは3.25%と21世紀以降の平均的な金利水準とさほど変わらない水準で取引されています。

では、エコノミストたちは、この金利の中立的な水準(あるべき水準)についてどのように考えているのだろうか。 HSBCチーフ エコノミストStephen King 氏は、「第2次世界大戦後の世界の金利水準を見てみると、1950年代から1960年代にかけては、投資家は高い金利を追い求めたいたにもかかわらず、政策当局者は、戦後復興をスムーズに遂行させるために政策金利を引く抑え込み、結果として低金利時代が長く続いた。 しかし、1970年代にはいって、オイルショック等を受けて金利は急上昇し、1980年代にかけては高金利時代に突入した。 しかし、こうしたインフレが鎮静化すると2008年の世界同時金融危機に向かって金利は低下している。 これの意味するところは、政策当局者が市場金利を意図的に長期間にわたり固定化させることはできず、また、過去の傾向が将来の予測には決して当てはまらないことを示している。 結局のところ、本当の金利水準は、経済の経済成長率に収束するのではないか」とコメントしています(マクロ経済学的には極めて当たり前の話)。

では、今後の経済成長を占う上で、マクロ的に考えなければいけない要因としては人口の増加率があげられる。 現在のアメリカの人口伸び率は2%であり、ヨーロッパは1%程度である(ちなみに日本はマイナスの人口増加率)。 更に考えなければいけないのは、これからは世界的に高齢化社会となり、そのことが金利の上昇を抑え込む力が働くということである。

また、人口問題以外にグローバリゼーションの影響も考える必要がある。 現在、発展途上国は経済成長著しいが、その煽りを受けて先進国にはデフレ圧力がかかり、このことも金利の上昇を抑え込む要因となっている。

世界的な運用会社PIMCOは、こうしたことを背景に今後の世界の金利水準は実質的にはゼロ金利となり、名目成長率程度の金利水準(2~3%)程度で推移するとの見通しを立てています。

ただし、その一方で、考えなければいけない重要なことは、今、世界中で各国政府の負債(国債)が急増しており、これを解決するには、債務のリストラクチャリング(実質的なデフォルト)もしくは、インフレによって実質的な債務の軽減を図るしか方法はない(つまり、現在のような低金利時代では各国の借金増加問題を解決する事ができない)。

本稿の締めくくりとして、英誌エコノミストは「世界的に長期間にわたって低金利が継続し、その一方で政府の債務(国債などの借金)が増大する中にあって、政策金利当局者(中央銀行)が金融政策運営を失敗するリスクが格段に高まっている」と指摘しています(残念ながら、金融政策の歴史は失敗の歴史の繰り返しだからです)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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