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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2014/02/06 14:50  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

円が安全通貨って本当ですか?!


おはようございます。

最近、世界的な株安が進行し、為替市場では円高になっていますが、それに関するマスコミの記事や市場関係者のコメントで気になることがありますので取り上げたいと思います。

今回の世界的な株安や円高の理由として、彼らは「これまでアメリカのQE3によって世界中にばら撒かれた資金が新興国通貨や株式市場に流入していたが、QE3のテーパリング(Tapering)によって資金がアメリカに還流した為に、比較的安全な通貨である米ドルや円が他通貨対比で買われている」というのです。

読者の皆様、これを読んでどう思われますか?
一見、「ふむふむ」と納得できそうな話に聞こえますが、よくよく考えてみますと、こうした説明は、ほとんど詐欺に近いような奇妙な話だと私は強く思いました。 と言いますのも、

(1) QE3によってアメリカから世界中にばら撒かれた資金がアメリカに還流すのであれば、これまで日本にも流入していたQE3の資金がアメリカに還流すれば、円は対米ドルで売られるはずです(米ドル高円安)。

(2)  このように言うと、市場関係者は「世界中のお金は何もQE3によってばら撒かれたお金だけでなないので、これまで様々な商品に投資されていた資金がリスク オフとして米ドルや円に来てもおかしくない」と回答されそうです。 もし、そうしたリスク オフの資金が円に流れ込むのであれば、「では、どうして日本の株価が先進国株式市場で最も下げ幅が大きいのか?」との問いにどう答えるのでしょうか?

(3) そのように言うと、彼らから「あくまでもリスク オフ資金なので日本の株式市場に資金を投入しない」との答えが返ってきそうです。

以上のように、彼らの説明は「ああいえば、こう答え、こう聞けば、今度はああ答える」と言ったまるで雲をつかむような事を並び立て、その内、うやむやに終わってしまうことが多いのですが、私に言わせれば、そもそも、彼らの言っていることが間違っているから説明が場当たり的に紆余曲折してしまうのです!

クロコダイル通信の有料サイトの読者の皆様は、もうお分かりだと思いますが、「今回の足元の円高は、比較的安全通貨である「円」に資金が流れ込んだのではなく、これまで大量に積み上がっていた米ドル買い円売りポジションが、今回の新興国通貨危機をきっかけにこれらのポジションの巻き戻し(unwind:円を買って米ドルを売ることでそれまでの円売りポジションを圧縮した)に過ぎないのです(まさしくリスク オフの行動)。 それが証拠に、IMMの円売り/米ドル買いポジションはピーク時から3~4割減少しましたが、それでも現在の市場参加者のポジションは引き続き大量の円売り/米ドル買いなのです。

よって、今回の円高は、円が比較的安全通貨だから買われたのでは決してありません!!

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “円が安全通貨って本当ですか?!
  1. st より
    なるほど

    そう言う事ですか、前橋さんは金融市場界のスノーデンみたいです。

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