2013/07/02 14:51 | 昨日の出来事から | コメント(1)
クレジット クランチを放置する中国中央銀行
先週号の英誌エコノミストに6月中旬に中国の短期金融市場において短期金利が12%まで急上昇した背景について記事がありましたのでご紹介したいと思います。
まず、2013年6月までは中国の短期金融市場のベンチ マークとされている上海3か月インター バンク のオファー レート(SHIBOR)は4%近くで1年以上に亘り安定的に取引されていました。 また、銀行間の資金のやり取りである1週間のレポ レートも3.5~4%で安定的に推移していました。 しかし6月19日に銀行間の取引は、お互いの資金繰りが苦しくなって通常よりも遅く始まったにも関わらず、中国中央銀行(People’s Bank Of China: 中国人民銀行)はこれを放置し、翌20日には1週間のレポ レートは12%まで急上昇してしまいました。
この背景には、5月末の米FOMCの決定を受けて、これまでの米国による金融緩和政策QE3が早期に縮小されるとの思惑から中国に流れ込んでいた資金も撤退するとの懸念が表面化することによって中国の銀行間の資金取引はタイトになり、そこに追い打ちをかけるかのように6月18日に、中国中央銀行が短期証券を発行し、その金額は僅かなものでしたが、問題は「こうした資金繰りがタイトになっても、中央銀行はこれに対して手を打たない(何もしない)」という明確なサインを市場に出してしまった事に市場関係者は一様に驚き、翌19日から20日にかけて銀行間のレポ レートは12%まで急上昇してしまったのでした。
通常の先進国の中央銀行では、こうした異常事態(銀行間の資金のやり取りがタイト、もしくは金利が急上昇する事態)が起こると、すかさず資金供給をして金繰りに困っている銀行にも資金が行き渡るようにするのですが、中国中央銀行はこれをしませんでした。 と言いますのでも、中国中央銀行の基本的な考え方は「中央銀行はマネー サプライに対する明確なターゲットとそれに伴う貸し出しの暗黙のターゲットをしっかり持ち、これを確保すれば銀行間の資金のやり取りも経済成長も安定的に推移する」とし、「銀行間の資金のやり取りがタイトになるのは、当該銀行の怠慢な資金繰りの結果であり、高い金利を支払うのはそのペナルティである」としています。
この観点に立てば、中国の銀行は、資金がショートすると(足りなくなると)、自分で高い金利を払って資金を調達しなければならず、体力の弱い銀行は高い資金調達に耐えられずに倒産するところも出てくる可能性があります。 一方で、体力のある銀行は、こうした事態が発生すると一斉に「貸し渋り」や「貸し剥がし」に走り、そのことが貸し出しの伸びを一気に押し下げ、結果的に景気を一気に冷やしてしまいます。 英誌エコノミストはこうした中国中央銀行のスタンスを「嘆かわしい」と酷評しています。
と同時に、私たちのように、日々、目先の収益機会を追いかけるものとしては、英誌エコノミストのように嘆いたところで何の足しにもなりません。そうではなくて、世界的に影響力の大きい国にもかかわらず、こうした対応を取る中央銀行があることをよく肝に銘じておかなければなりません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “クレジット クランチを放置する中国中央銀行”
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何のサインか・?
それが・・
気がかり・・・