プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/04/19 14:52  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

TPP,農協なんて怖くない!?


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに日本のTPP交渉参加に最大の反対勢力である農協に関する記事がありましたので、ご紹介したいと思います。

日本の農業人口150万人中、専業農家は42万人に過ぎず、残りは兼業農家であり、その大半は高齢化が進む中にあって、彼らの多くは農業に投資をせずに耕作地の荒廃が進んでいると指摘しています。 人数的にはそれほど多くない彼ら(農業従事者)ですが、彼らを束ねる組織(全農)の影響力は絶大で、東京だけでも24万人の職員を雇用し、特に自民党に対して隠然たる力を行使しています。 この影響力の大きさでもって、これまで米に関しては777.7%、バターには360%、砂糖には328%の関税をかけさせることに成功してきました。

今回の日本政府のTPP交渉参加を巡っても農林大臣は反対表明をし、「(日本の)米生産の90%が今回のTPP参加交渉によって影響を受け、農業従事者とその関連従事者を合わせると360万人の雇用に影響が及ぶ」としています。

また、政治家でも、これまで農林族の代表格であり、最近まで国会議員であったKozo Watanabe氏は「(農業は日本人にとって)心の礎であり、農業によって日本人の文化やアイデンティティ(identity)が形成されてきた」とし、単に安いコメを輸入するかどうかの問題で済ますべきではないとしています。

英誌エコノミストは、日本の兼業農家の多くの作付け面積が平均で1.5ha(ヘクタール)と小さいのは、「第2次世界大戦後の農地改革によって農地の細分化が進んだ事や、元来、山の多い日本の風土にあって農地が狭くならざるを得なかったことが現在の農業の非効率化につながっている」と一定の理解を示し、 また、全ての日本の農家がTPPに反対しているわけでなく、TPPを寧ろ新たなビジネス チャンスと捉えている農家もあることを紹介しています。

それにしても、問題は、「TPP参加するしないにかかわらず、衰退していく日本の農業を再生させる仕組みをどうやって作るか?」が大切で、「農業を放棄していく高齢者の農地を、農業を積極的に取り組みたい人や企業にどうやって移行させるか」が今後の課題であるとしていますが、その際にも、やはりJA(全農)が大きく立ちはだかるだろうと指摘しています(何故ならば、彼らにとって一番都合がいいのは“現在の仕組みをそのまま維持すること”だから)。

しかし、英誌エコノミストは、最後に「その全農も、今後、ますます加速する農業従事者の高齢化に伴って、その隠然たる影響力もいずれは衰退せざるを得ない」と締めくくっています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。