2013/03/27 05:42 | 昨日の出来事から | コメント(1)
日本のTPP交渉参加表明を冷やかに見るオーストラリア
今週号の英誌エコノミストに日本のTPP交渉参加に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
ご存じのように、3月15日に安倍総理が日本のTPP交渉参加表明をしましたが、TPP交渉は既に2年前から始まっており、その交渉回数は13回に及び、年内妥結(出来れば10月を目標)とする交渉は、残すところ交渉回数にして2回程度しかありません。
しかも、アメリカが日本の交渉参加を議会に諮問する期間が90日間もあり、これを勘案すると早くても日本のTPP交渉は6月中旬頃となります。日本のTPP交渉参加表明に対するTPP参加国の反応と言えば、ASEAN諸国(シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア)は、概ね日本の交渉参加を歓迎し、メキシコ、ペルー、チリも日本の交渉参加を好意的に見ています。
しかし、私の住むオーストラリアや隣のニュージーランドは、日本の交渉参加表明に対し「交渉の最終段階で、スピンアウト(離脱)するのではないか」と懐疑的です。 と言いますのも、日本とオーストラリアの二国間の自由貿易協定はどれほど話し合っても妥結に至らず、2007年以降は棚上げされたままだからです。 また、これらの国は、日本がコメ(関税率778%)や、砂糖、乳製品、豚や牛に対し関税を残すことに固執するのではないかと懸念を持っています。 また、カナダも自国の主力輸出品の一つである乳製品に対して日本が関税を残すことに懸念を示しています。
これに対して、英誌エコノミストは、シンガポールの シンクタンクの見通しを紹介しながら、今後のTPPの成り行きについてやや楽観的で、
(1) 安倍総理がTPP交渉参加表明をして以来、TPP参加に対する国内の支持率が上昇しており、うまく行って夏の参議院選挙を勝利で乗り切ることが出来れば、よりTPP参加に弾みがつく。
(2) また、 こうした事(支持率の上昇)を背景にこれまで頑なに固執していた高い関税率に対し、その引き下げにも言及するなど、関税そのものに対して柔軟な姿勢がうかがえる。
(3) 大局的には、日本がTPP交渉に参加表明した事で、お隣の韓国も追随する可能性が出てくるかもしれない。
(4) 更には、今や世界第2位の経済大国中国も将来的には、「TPPに参加せざるを得ない」と考え始めるかもしれない。
とTPPの更なる拡大の可能性を示しています。
もし、そうなれば、世界の第1位、第2位、第3位の経済大国が参加する世界一巨大な自由貿易圏が出来ることになるのですが、果たして英誌エコノミストの期待するようなことになるかどうかは甚だ疑問です。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “日本のTPP交渉参加表明を冷やかに見るオーストラリア”
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関税ゼロだと言って一方で通貨安戦争をしているようでは自由貿易って何なんだと言う事になるのでは、安倍麻生政権は日本では支持率70%前後らしいが外国からは冷ややかな目で見られているんだろうなあ、灯台下暗しとはよく言ったものだは。