2013/03/26 06:36 | 昨日の出来事から | コメント(1)
キプロス、「大丈夫だ!」と思った途端に!?
今週号の英誌エコノミストに上のようなタイトルでキプロスの銀行危機に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存じのようにキプロスで銀行に関する混乱が続いています。 既に銀行が閉鎖されて1週間が経ち、キプロス国民は、連日、ATMに行列をなして1日の上限額のユーロを引き出すことに奔走し、銀行閉鎖の影響は、キプロス経済そのものにまで悪影響を与え始めています。
また、キプロス議会も一度は否決した預金に対する課徴金(一部没収)について、預金12.5万ユーロ(日本円で1500万円程度)以上の預金者に対し、25%の課徴金(預金没収)の修正案を議会で可決しようとしています。 これは明らかに、課徴金対象となる大口預金者の大半がロシアの富裕層の預金であり、自国民(キプロス国民)の預金を極力守りつつ、外国人の預金で銀行支援の補填をしようとした、(ロシア高官の言葉を借りれば)「泥棒が更に泥棒をする」行為と言われても仕方がありません。
そもそもキプロスの銀行不良債権は、ギリシャ危機の勃発によってギリシャ国債が暴落し、同国債を大量に保有していた為に発生した事も大きな要因ですが、それ以前から自国経済を観光業から金融業にシフトし、高い預金金利でロシアを始め外国から集めたことが背景にあります。
また、12.5万ドル以上の預金者から25%の課徴金を科す根拠としては、キプロスは9か月前からEUに申請した17bnユーロの支援金に対し、今回、EUとIMFは10bnユーロしか支援金を拠出せず、残りを預金者の課徴金で穴埋めすることを要求された為に、その数字合わせで7bnユーロの課徴金を徴収することになりました(初めに7bnの課徴金ありきの議論)。
今回の措置について、先週にもご紹介したように英誌エコノミストは厳しく批判しています。その主なポイントとしては、
(1) 1970年以降、IMFによれば147件の銀行倒産問題があったが、これまでの全てのケースにおいて預金者保護は保障されてきた。 今回、それが保証されなくなることによって、今後、他国の経営の悪い銀行預金者が、いつ、どこで、どれだけの規模で預金引き出しをするか予測できないことになってしまった(そのリスクは、キプロスの僅か7bnの支援金以上の非常に高いコストになる可能性が大きい)。
(2) また、今回の措置によって、ドイツ国民からすれば、「何故、ドイツ国民の税金を使ってロシアの富裕層の預金を補てんしなければならないのか?」と言った不満には答えることが出来たかもしれないが、その一方で、ロシアは今回のキプロスの預金課徴金の結末を注視しており、その結果如何では、別の政治的な問題を引き起こす可能性がある。
(3) また、今回の事態を受けて、キプロスはEUから離脱する可能性があり、折角、ギリシャをEUに引き留めたことに成功したにもかかわらず、キプロスが離脱すれば、EUの結束が再び崩壊の危機に直面する可能性がある。
と指摘しています。
では、「このキプロス問題をどうすればいいのか?」という問いに対し、英誌エコノミストは、既に遅きに失した事は否めないとしながらも、
(1) キプロスの救済に当たっては、キプロス政府に支援金を出すのではなく、EMSからそれぞれの銀行に直接支援金を出すべきである。
(2) また、(先週にも書きましたが)これを機会にヨーロッパの銀行統一に向けた最初の試みを行うべきである。 また、今まで混乱が続いていた北キプロスと南キプロスの統一のための話し合いのきっかけにすべきである。 更には、これまでの金融業に頼った経済から本来の観光を中心とした経済に立て直すべきである。
(3) そして、何としても、キプロスをEUから離脱させてはならない。たとえ、それが「EUのメンバーであることだけの為の嫌々ながらの「結婚」である」としても。
と、述べています。
かつて、私達も1990年代に日本の銀行倒産を経験し、「自分の預金は大丈夫だろうか」との思いに駆られたことがありましたが、それでも心の奥底では「まさか、自分の預金まで没収されることない!」と高を括っていました。 しかし今回のキプロス政府の動きを見ていると「その『まさか』が起きることもあるんだなあ」と思うところ大いにありました。
読者の皆様、キプロスの出来事を「他人事」と思わず、心の隅にしっかり刻んでおきましょう!
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One comment on “キプロス、「大丈夫だ!」と思った途端に!?”
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日本だって緊縮財政に踏み切ったら、今回一回限りだと言って何をするか分かりませんよ、幼稚な安倍や麻生には緊縮財政なんか出来ませんが、橋下だったらやるでしょう、これだけでも誰がリーダーに相応しいか明らかです。