2012/05/18 06:37 | 昨日の出来事から | コメント(2)
ドミノ ダンスに怯えるヨーロッパ
今週号の英誌エコノミストに今回のギリシャ議会再選挙とその後の展開に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存じのように、ギリシャは財政破綻危機に陥り、201年から2012年かけてGDP対比8%の財政削減を行った結果、国内GDPは2007年を100とすると18%も減少してしまいました。 そこに、EU及びIMFの更なる追加支援を得る為には、ギリシャは今後2014年にかけて更にGDP対比7%も財政削減を行わなければならず、これに対してギリシャ国民は耐えかねて悲鳴を上げ、今回の議会選挙結果となってしまいました。
英誌エコノミストは、ギリシャの現状と今後の展望を考えると、EUやIMFの財政削減計画はいずれ破綻し、ギリシャはEUから離脱せざるを得ないとしています。 そしてその後は自己通貨ドラクマを現在のユーロの価値に比べて非常にや水準で流通させることによって、ギリシャは財政債務を強制的に帳消しにし(ギリシャ国債をデフォルトし)、その安い国際労働力によって経済再建の目途が立つとしています。
しかしそれはギリシャの一方的な手前勝手な話であって、一方では、ギリシャの債権やギリシャ国債を保有しているヨーロッパの銀行や投資家にすればたまったものではありませんし、これを先回りする間のようにギリシャの銀行の預金の3割以上が既に流出し、ECBはこれを穴埋めすべく流動性供給を必死にさせられる羽目になっています。
更に、ギリシャのEU離脱が現実のものとなると、今後は財政削減計画に問題のある国が出てくると、EU離脱第2号、あるいは第3号と「離脱ドミノ(もしくはその連想)」が起こり、それによる金融市場混乱コストは誰の想像もつかないほど大きなものとなります。 英誌エコノミストは、今、ヨーロッパの銀行では「ギリシャがEUから離脱するケーススタディを社内ですることはタブーとなっているほど、そんな末恐ろしい事を考えたくない」と指摘しています。 これは、まるで、何処かの国の原子力安全委員会が、「原子力発電所において全ての電源喪失といった事態はあり得ないのでそんなことは考えなくていい」と思考停止状態に陥っているのと非常に似ています(ただし、ギリシャ最大の債権者の一人であるIMFは、既にこうした事態に備えてのフィージビリティ スタディ(feasibility study)を始めています)。 結局の処、6月選挙結果がどうであれ、「ギリシャは、早晩、EUから離脱可能性が高いと」の前提で我々は準備をする必要がありそうです。
最後に、英誌エコノミストは「やらなければならないことが非常に多く、かつ、その準備期間は非常に限られているにもかかわらず、フランスやドイツは、殆ど何もしていない」と厳しく批判しています(といいますか、フランスもドイツも自国内の選挙で現在の政策に対して国民が「No!」を突き付けられて身動きできなくなってしまっています)。
ちなみに、今後の政治日程と資金繰りですが、ギリシャでは、6月17日にギリシャ再選挙が予定されており、6月末にはEUとIMFから突き付けられたギリシャ政府によるGDP対比5.5%の更なる削減策を発表する期日がきます。 しかし、もし、これが出来なければEUやIMFからの追加支援を受ける事が出来ず、年金や公務員の給料の支払い原資が枯渇してしまいます。
Please Fasten Your Seat Belt!! (お座席のシート ベルトをしっかりお締めください!!)
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2 comments on “ドミノ ダンスに怯えるヨーロッパ”
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シートベルトを締めるよりも・・
パラシュートを背負い・・
飛び降りる方が良いのでは・・・?
離脱せずに苦労する方が意味があるのではと考えるが、ギリシャ国民はどう考えるのだろう。