2013/03/12 05:55 | 昨日の出来事から | コメント(1)
現在の株価水準を正当化できるものは何もない?!
今週号の英誌エコノミストに、現在の世界的な株高について「他のものよりまし?!」と題した記事かありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存じのように、NYダウは連日史上最高値を更新し、日本株もリーマンショック後の高値を更新する相場が続いています。 これは何もNYダウや日経平均だけに限った事ではありません。 MSCI World Indexは今年に入って僅か2か月間で5%上昇し、特に日経平均は13%も上昇しています。その一方でこれまで株価上昇の牽引役であったエマージング マーケットの株は殆ど上昇していません。
さて、こうした株高を正当化させるものは何でしょうか?
まず考えられる事として、経済学的には、その国の経済(GDP)が拡大すれば、株価全体も上昇するという考え方です。 しかし、2007年以前の50年間を10年ごとに区切り、それぞれの期間の米GDPとNY株価の関係を見ますと、そこに強い正の相関関係(経済が成長すれば株価が上昇する関係)があるとは必ずしも言えません。
次に考えられるのが、「他の投資に比べて“まし”」といった考え方があります。 これは中央銀行の金融政策により、現在の短期金利の水準がほとんどゼロとなり、長期国債の利回りも軒並み2%そこそこしかない状態にあって、投資家は「他に投資するものがないから株に投資した結果、株価上昇につながっているというものです。 この考えが、現在の株価水準を正当化させるものとしては一番説得力がありそうです。
さて、3つ目の考え方としては、個別の企業業績が上がる(もしくは近い将来上がると期待される)ことを理由にそれぞれの株価が上昇し、その結果としてその国の株式市場全体が上昇するという考え方です。この考え方に基づいてエール大学のRobert Shiller教授が行っている景気循環的要素を勘案した長期的な平均的収益比率(過去10年間の平均的な収益率)をとそれぞれの企業の株価水準を比べて見ますと、現在の米国株は個々の株式の平均的な収益率に比べて50%も割高となっています。 また、このことは、もっと単純な比較方法として、現在の米国株式の配当比率は2.6%であり、過去の平均値4.1%を大きく下回っている(株価が上昇しすぎている状態である)ことからもわかります。 この考え方によれば、現在の株価水準は明らかに割高であり、いずれ株価水準は調整されることになります。
以上のように、現在の株式市場は、他に投資する対象がない故に株式投資に集中し、その結果として、既に非常に割高状態になってしまっています。このことは、大量の資金を今後も運用をしなければならないファンド マネージャーにとってはいい話ではありません(もう買える投資対象がないため)。 しかし、かつてのように低金利で運用難の上に、更には株価低迷で苦しんだことを思えば、現在のような割高な株価状態にまで買われた株式市場は、いずれ調整があるとわかっていても、それまでは「ありがたいこと」のようです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “現在の株価水準を正当化できるものは何もない?!”
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IT革命でITバブルが起きたようにシェール革命でシェールバブルが起きても不思議ではないのでは、今アメリカはIT革命やシェール革命や戦争が終わったと言うことで投資家が景気が良くなると思っているとしか思えませんね。