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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/01/30 07:34  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

イタリア国債、スペイン国債はまだ買える?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストにユーロ信用危機に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。 ご存じのように、2012年7月にドラギECB総裁が、「ユーロ存続のためにECBとして出来ることは何でもする」と発言して以来、通貨としてのユーロを始め、それまで大きく売られていた南ヨーロッパの財政危機国の国債は大きく買い戻されています。

例えば、スペイン国債は、2012年7月25日には、償還3年物の国債から10年物の国債に至るまでほぼ7.5%近辺で取引されていましたが、2013年1月16日時点では、残存3年物の国債で3%程度、10年物の国債でも5.5%近辺まで金利は低下(価格は上昇)しています。 この間、多くの投資家は損切を覚悟で売却し、これに買い向かったのがECBであり、一部のヘッジ ファンドでした。 また、最近に至っては、年金をはじめとする機関投資家も、相対的に他の国債に比べて割安感の残るスペイン国債やイタリア国債に食指を伸ばしています。

こうした背景には、金利が7%台まで上昇していた時には、国債の発行や償還は持続維持不可能とされていましたが、金利が5%近辺まで低下してくると、変な話ですが、「この程度の金利であれば、今度は償還や発行に問題がなくなった」として買いに回っています。

しかし、英誌エコノミストは次の点を上げてこうした国債の購入に対して警鐘を鳴らしています。 

(1)確かに、金利水準だけを見ると、スペイン国債やイタリア国債は持続維持可能な金利水準にあると言えるが、一方で、それぞれの国の今年のGDP予想は、スペインでマイナス1.25%程度、イタリアでもマイナス0.8%程度の見通しになっており、景気が回復する道筋は全く見えていない。

(2)更に、最近になってヨーロッパの政治家は、現在の小康状態に安心して、これまでの議論してきた更なる財政規律の強化に関する議論が大きく後退している。 シティ グループのWilliam Buiter氏がこうした動きを見て「ヨーロッパの政治家は、拳銃を突きつけられた時だけ動いている。 しかも、その拳銃はマーケットだけだと考えている(本当は他にもたくさんの拳銃があるはずだ)」と指摘しているように、かつては「悲観の伝染」がヨーロッパに蔓延したが、いまや、「楽観の伝染」がヨーロッパに広まり、そのことが事態を非常に有害なものにしている。

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2 comments on “イタリア国債、スペイン国債はまだ買える?!
  1. st より
    財政規律

    ユーロ圏国家は財政規律を守ることは共通認識として定着するまで言い続けないといけないと思っているんでしょうね、日本も財政規律が破綻し中央集権官僚制が行き詰まっているのが分かっているのに自公民はまだ続けようとするんだからユーロ圏国家とさほど変わらない。

  2. maehashi より
    st 様

    いつもコメントありがとうございます。

    流石、st様、私の申し上げたかったことはst 様が全ておっしゃってくださいました。

    そうなんです。結局、日本もユーロも変わらないのです。
    日本の多くの方は「何をいう!日本は、ユーロとは違うんだ!!」と豪語する人が私の身の回りの方も含めてたくさんいらっしゃるのですが、、、、(笑)

    実に困ったものです。

    前橋

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