2012/08/24 06:47 | 昨日の出来事から | コメント(2)
「EUを守る為にECBの出来ることは何でもする!」に疑義あり?!
これまで、ユーロ信用不安が市場で騒がれる度に、ECBは市場で売られている国債を購入し、あるいは政策金利を引き下げ、更には追加的資金供給をして市場の動揺を鎮めることに努めてきました。 しかし、そのECBの市場介入効果は、時間の経過と共に、その効力は薄れ、その介入効果の期間も短いものになってきてしまっています。
8月2日には、ECBのドラギ総裁が「EUを守る為にECBとして出来ることは何でもする」と大宣言をし、新たな市場安定策をECBが近く打ち出すことを表明しました。 しかし、先週号の英誌エコノミストは、この新しい市場安定化スキームを成功させるためには多くのプロセスを経る必要があり、尚且つ、その実行性に疑問を投げかけています。
(1) まず、これまでECBが行ってきた国債を流通市場から購入していたスキームとどう違うかと言えばそれまでは、売られていた長期国債の流通利回りを引き下げることを目標として国債利回りを下支えることを主たる目的としていましたが、今後は、長期国債よりも短期国債を中心に購入するとしています(理由は後述)。
(2) 更に、新しく市場からECBが国債を購入する際には、当該国がヨーロッパ安定化基金にECBによる国債購入の支援要請をする必要があります(ECBの独自の判断ではなく、当該国の要請を明確化させることで、責任の所在を明確化させる狙いがあります)。
(3) 一方、ヨーロッパ安定化基金は、元来、ECBと違って支援を要請する国の国債を発行時に直接購入することが出来ますが、当該国が、支援を要請する際に受け入れた財政再建計画を順守できないときには、それまで安定化基金が保有していた当該国の国債を売却することになっています(当該国としては、ヨーロッパ安定化基金よりもECBに買ってもらう方が、財政再建計画が順守できなかった時のダメージがより少ない(当該国には、端から財政再建を順守できる自信がない?!)。
(4) ECBとしては500bnユーロ(日本円で約50兆円)の枠の範囲内で、短期償還の当該国債を一定の条件を満たせば買うことにしています。 短期償還の国債を中心に買い入れる理由は、償還を短く擦りことによって、当該国のECBが出した条件の順守にプレッシャーを与えることが出来ます(順守できない場合には、償還後、新しく国債を購入してもらえない為)。
(5) また、ギリシャの民間による自主的リストラクチャリングの際にECBは対象外とされた為に、民間の投資家は、当初、想定していた以上の損失(ECBの保有分まで)を負担しなければなりませんでした。これに対し、今後の計画では、将来、ギリシャのような民間の自主的リストラクチャリングの際には、ECBも何らかの対策をとるとしています(ある程度の損失をECBも負担する方向で調整か)。
(6) しかし、以上のような計画をしても、少なくとも9月12日まではECBは身動きできません。 と言いますのも、ドイツ最高裁判所は、(ヨーロッパ安定化基金の元となっている)ヨーロッパ恒久救済基金が合憲であるかどうかの判断が下されるからです。 また、オランダやフィンランドでは、こうした新たなスキームに対する国民投票が予定されています。
結局の処、8月2日に市場を大いに驚かせたドラギ総裁の発言とその実行性は、毎度、毎度のことですが、当初、考えられていたほどの規模も機動性もなく、市場が予想していたものに比べて、悲しいほど「しょぼい」ものに終わりそうです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “「EUを守る為にECBの出来ることは何でもする!」に疑義あり?!”
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オランド総裁・・
前評判・・
独逸人より独逸人らしい伊太利亜人・・
今は・・
伊太利亜人より伊太利亜人らしい伊太利亜人・・・
ECB総裁を・・
オランド・・
と書いたのは・?・
ドラギ・・でしょう・・
しかし・・
オランド引退後・・
ECB総裁になる・・可能性ある・・
メルケルも・・・(笑)