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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/07/20 04:49  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

見かけ上は同じ為替レートでも本当は円安!?


おはようございます。

また、為替市場では米ドルに対して再び円高の様相を呈してきました。 しかし、この円高、円安ですが、単純にスクリーン上の数字を見て「円高だ!」とか、あるいは「円安だ!」と議論するのは、本当の意味での円高、円安の議論をしたことにはならないという事について今日はお話したいと思います。

私のように海外で暮らしていますとこうした違い(名目為替と購買力平価による為替の違い)をはっきりと実感できます。 例えば、私が2008年にオーストラリアに移住した時の豪ドル/円の為替レートは80円台前半でした。 そして2012年現在でも豪ドル/円は80円台前半で取引されています。 そこで、今回の議論をわかりやすくするために、2008年の豪ドル/円の為替水準と、2012年の豪ドル/円の為替水準を80円で同じだったとします(つまり、2008年の豪ドル/円の名目為替レートと2012年の豪ドル/円の名目為替レートは80円で同じとします)。

読者の皆様の中には「2008年の豪ドル/円の為替レートが80円で、2012年の豪ドル/円の為替レートが同じなのだから、現在の為替水準は、2008年の為替の水準と同じではないか」と思われるかもしれません。 でも、それは違うのです! 確かに見かけ上は2008年の豪ドル/円の為替レートと2012年のそれは同じですが、それだけを比べただけでは本当の意味で円は豪ドルに対して円高なのか円安なのか(あるいは今回の場合では同じ水準なのか)の判断はできないのです。 といいますのも、この2つの時点での為替水準を正しく認識するにはその時々の物価(購買力)を勘案する必要があるからです。

そこで これをわかりやすく日本とオーストラリアにあるマクドナルドのハンバーガーを使ってお話したいと思います。

例えば、2008年に豪ドル/円の為替レート(名目為替)が80円の時に、日本のマクドナルドのハンバーガー(物価)1個が80円であり、オーストラリアのマクドナルドのハンバーガー(物価)1個が1ドルだったとします。そうしますと、日本のマクドナルドに行って80円を出せばハンバーガー1個を買うことができ、 また、その時に、銀行に行って、当時の日本円を豪ドルに両替して(為替レートは1豪ドル=80円)、飛行機に乗ってオーストラリアに着いて、オーストラリアのマクドナルドに行ってハンバーガーを買えば1ドルで買えます(つまり、名目為替豪ドル/円が80円の時にマクドナルドのハンバーガー1個は、日本では80円で買え、オーストラリアでは1ドルで買えます)。

そこに、それぞれの国の物価を考慮します。 例えば、2008年から2012年までの日本の物価上昇(インフレ)がゼロだったとし、一方で、オーストラリアの物価上昇(インフレ)が15%だったとします(物価が15%上昇したとします)。そうしますと、2012年に日本のマクドナルドに行ってハンバーガー1個を買えばやはり80円で買えますが(インフレがゼロのため)、この時、オーストラリアのマクドナルドに行ってハンバーガー1個を買えば1.15ドルとなります(何故ならば物価が15%上昇したため)。

そして、2012年に、2008年と同じように日本円80円をもって銀行に行ってその時の為替レート(1豪ドル=80円)で両替して、飛行機に乗ってオーストラリアに着き、オーストラリアのマクドナルドに行って、ハンバーガーを1個買おうとしても その価格は1.15ドルに上昇している為、2008年には買えた筈のハンバーガー1個が買えないのです! これを買うためには、1.15ドル持っていく必要であり、それに該当する日本円は92円なのです。

つまり、2012年にオーストラリアでハンバーガー1個買うためには、日本で92円の日本円を銀行に行って、2008年の時と同じ1豪ドル=80円の為替レートで豪ドルに両替して1.15ドルを得てやっとオーストラリアのマクドナルドでハンバーガー1個が買えるのです。 これは、2012年と2008年の名目為替レートは同じ水準であっても、物価勘案後の豪ドル/円の為替レート(購買力平価でみた為替レート)では、円は豪ドルに対して15%円安になっていることを意味しています。

では、購買力平価からみた為替レートで、2008年と2012年が同じ価値となる為替レートの水準はどうなるかと言えば、80円÷1.15=69.56円となります。 つまり、2012年の豪ドル/円の名目為替レートが69.56円の時、日本円80円をもって銀行に行けば、それを1.15ドルに両替することが出来、その後、飛行機に乗ってオーストラリアのマクドナルドに行けば、ハンバーガー1個を買うことが出来るのです。つまり、2008年と同じ価値となる購買力平価からみた豪ドル/円為替レートは1豪ドル=69.56円なのです。

同じことは、米ドル/円でも言え、2008年に円が対米ドルに対して80円を割り込んだ時に比べて、購買力平価からみた現在の円の価値は米ドルに対して大幅に円安なのです!(何故ならばアメリカの物価がこの間に大幅に上昇しているため)。

ただし、ユーロ/円に関しては、比較する期間にもよりますが現在の水準は、名目為替レートが購買力平価からみた為替水準以上に円高になっています。

このように、本当の意味での為替水準(円高、円安)を議論するためには、見かけ上の為替レートだけを比較して議論するのではなく、それぞれの国の物価を勘案する必要があるのです!

にもかかわらず、日本においては、多くの場合、見かけ上の為替レートだけを見て、「歴史的な円高!!」とマスコミ、経営者、そして政治家(時には財務省や日銀まで)が大騒ぎしますが、こうした発言には非常に注意を払う必要があります。何故ならば、こうした発言の中には、「(マスコミや政治家を中心に)全く何もわかっていない」で発言している場合と、逆に「(財務省や日銀、更には大企業の経営者を中心に)何か裏があって」発言して場合があるからです(何故ならば、彼らは為替水準の議論において名目為替だけを比較して議論することは「意味がない」という事をよく知っているからです)。

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平素は、クロコダイル通信をご愛読いただき、ありがとうございます。

私事で恐縮ですが、これから日本まで飛行機で移動します。

つきましては、いただいたコメントやご質問に対して、公開もしくはお返事が遅くなりますことをご了承賜りますようお願い申し上げます。

それでは、よい週末をお過ごしください。

前橋 拝

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One comment on “見かけ上は同じ為替レートでも本当は円安!?
  1. 初心者 より
    なるほど!

    通貨価値のわかりやすい説明をして頂き、ありがとうございます。小生も近年、オーストラリアに行ったときに、物価がたかいなぁ、と肌で感じました。

    お仕事でお忙しいかもしれませんが、食べ物、風景など久しぶりの日本を楽しまれてください。

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