2012/02/09 06:05 | 昨日の出来事から | コメント(0)
日本の銀行、再び海外へ
今週号の英誌エコノミストに日本の銀行が静かに海外への投資を始めている事に関する記事かありましたので、ご紹介したいと思います。
日本の銀行は、かつて、1980年代のバブル期、そして1990年代に海外に進出した時期がありました。
1980年代のバブル期は、日本の銀行や企業がド派手にアメリカの企業や不動産を買収し、特にアメリカの象徴的存在ともいえるロック フェラー ビルの大半取得は、アメリカの人々にある種の恐怖感を与えました。しかし、実際の犠牲者はアメリカ人ではなく、それを取得した日本の企業で、その後の不動産価格の下落で大損をして、再びアメリカの企業に手放した事は読者の皆様もご存じのとおりです。
とはいえ、全てが失敗したわけではありません。 例えば、かつて住友銀行がゴールドマン ザックスに出資した案件は、当初は資本出資と言うよりもパートナーシップを狙った為に物議をかもし、結果的には資本出資だけの形になりましたが、投資としてはいいリターンを生みました。
このような成功例から学ぶことは、事前の慎重な分析の下、小さな案件に投資することが次の日本企業の海外投資の特徴となりそうです。
今、西側の銀行(特にヨーロッパの銀行)は外国からの資本を必要としており、その一方で、日本の銀行は、1990年代からのバブル期の不良債権処理をほぼ終えて資本的には比較的健全性を維持する一方で、日本の国内でビジネスを拡大させることには悲観的であることから、おひざ元のアジアの投資物件だけに留まらず、アメリカやヨーロッパにその投資対象が向いています。
最近では、三井住友ファイナンシャル グループが、Moelis&Companyの株の5%であるUSD93mnの出資を発表しました(これは、同社がRBS(ロイヤル バンク オブ スコットランド)からUSD73bnの航空機リース部門に出資することを発表した直後の事でした)。 また、三菱UFJファイナンシャル グループが、以前にモルガンスタンレーに対し22%の出資をしましたし、更にはユニオン バンクで知られているUnionBanCalの完全子会社化に踏み切りました。
更には、今、AIGグループの航空機リース部門の売却等、大型案件が目白押しですが、誰も日本の企業がかつてのように熱狂的に買収に走るとは考えていません。 むしろ、(買収案件の仲介業者である)CLSAのBrian Waterhouse氏が言うように「日本の企業は、現在の競争相手も少ない中、じっくりと我慢強く投資案件を探している」とし、更に「彼ら(日本の企業)は、待てば待つほど、売り手は自暴自棄になってくると考えているようだ」としています。
日本の企業がそうした態度を取るのも当然で、日本は、1990年代に、本来であれば潰れる必要も、また、安く叩き売られる必要もなかった企業や銀行を資本不足というマーケットのルールに抵触した為にそれこそ自暴自棄の破れかぶれになって潰したおかげでどれほど多くの従業員を路頭に迷わせたことか。 恨みや辛み(つらみ)は言い出せばキリがありませんが、今度は逆に、日本の企業が、資本主義のゲームのルールに従って、冷静に、かつ、いい物件をそれこそ相手の血ヘドを吐かせるようなクソ安い値段で買い取り、20年後、30年後の飯のタネ(失礼しました!どこかの国会答弁ではありませんが、礎(いしずえ))となることを願ってやみません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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