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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/04/17 06:02  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

スペイン危機はヨーロッパ夏の陣?!


おはようございます。

去年の暮れから今年の初めにかけてヨーロッパではギリシャの最終的な財政再建処理(実質的には部分的なデフォルト)を何とか終えて一息をついたのですが、それも束の間、次の懸案国ポルトガルとスペインの内、スペインに火の手が上がっています。 といいますのも、ポルトガルはギリシャよりも経済規模は小さく、また、EUによるギリシャ救済のスキームの中でポルトガルを救済するための基金もある程度確保していますが、スペインの経済規模はEUで5番目の大きさであり、その時はとてもスペインの救済まで全く手が回らなかった背景があります。

今週の英誌エコノミストにこの辺りの事が掲載されていますのでご紹介したいと思います。
そもそも去年の11月にECBによるLTROS(long-term refinancing operations)が発表され、2011年12月と今年の2月の合計で1兆ユーロ(日本円で約110兆円)もの資金(期間は3年で金利は1%)を市場に注入しました。 

これを受けて去年の11月時点で10年国債の利回りが7%近くにあったイタリア国債は今年の2月には5%近辺まで低下し、同じくスペイン国債も去年の11月の6.5%近辺から5%割れの水準まで利回りは大幅に低下しました。 これによってスペインやイタリアの銀行がLTROSから安い金利で調達した資金で安い国債を大量に買って大儲けをし、 その一方では、それまでイタリア国債やスペイン国債を大量に売っていたヘッジ ファンド筋が大損をして、泣く泣く買い戻しをさせられたのでした。

ところが、ここにきて国債の利回りが5%程度の水準にまで低下し、しかも次のLTROSによる資金供給のスケジュールがはっきりしない中、市場ではこれ以上買い進む向きはなく、寧ろ、足元のスペインの財政再建計画が当初の計画に比べて大幅に遅れ始めた為に、これに失望して売り物が出てスペイン国債の利回りは6%近くまで上昇しています(同じくイタリア国債で5.5%程度まで利回りは上昇)。

特にスペインの場合、1990年代の土地と住宅建築バブルの影響で銀行のバランスシートが大きく毀損していますが、それでもまだ不動産の評価価格は非常に割高なままで、今後は更に評価損が発生し、政府は銀行支援の為に更なる財政負担が必要になる事が予想されています(ちなみにアイルランドの土地バブルの不良債権処理は、スペインと違ってかなり終わっています)。

加えて悪い事に、民間の債務の多くは間接的に銀行経由で外国の投資家に負っており(具体的には海外の投資家がスペインの不動産をスペインの銀行から借金して保有している)、その債務の大きさは、海外の投資家によるスペイン国債の保有と合わせますとスペインのGDPの93%の規模と非常に大きなものとなっています(ギリシャやポルトガルでも同様の事が当てはまります)。

英誌エコノミストは、スペインもイタリアも現在のような10年国債の利回りが続けば、調達コストが高すぎる為に財政破綻する事は避けられず、いずれはギリシャでも行ったようにECBによるイタリア国債やスペイン国債の直接購入をする必要があるとしています。 また、当面はスペイン政府が国内の銀行に資本注入をして、現在、売られているスペイン国債の利回りを落ちつかせる事が出来るかどうかにかかっていると指摘しています。

しかし、投資家は、早くもギリシャ同様にこれらの国債のリストラクチャリング(実質的なデフォルト)を心配し始めており、更に、前回、痛い思いをさせられたヘッジ ファンド筋は「いまやフランス国債が我々にとって一番安いコストでショート出来る」と 既にターゲットはフランス国債の売りに目が向き始めています。

ヨーロッパでは、早くも「夏の陣」が始まっています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “スペイン危機はヨーロッパ夏の陣?!
  1. ペルドン より
    冬の陣

    ではありませんか・・・?

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