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2010/12/09 05:36  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ウィキリークスの創始者逮捕で揺れるオーストラリア


おはようございます。

遂に、ウィキリークスの創始者ジュリアン アサンジ氏が逮捕されました。 彼はオーストラリア人で私の住んでいるクイーンズランド出身の39歳で元は有名なハッカー(こちらのテレビはそう言われています)。

当時、ウィキリークスで大量の内部情報が公開されて世界を驚かせた時のオーストラリア政府の狼狽ぶりはひどいものがありました。 例えば、オーストラリア国内でウィキリークスを閲覧できなくなる措置を検討し、更にはジュリアン アサンジ氏のパスポートを没収する事を検討していると聞いた時は、私は「なんだ、オーストラリアのやろうとしている事は、中国と変わらないじゃあないか!」と思ったのでした。

しかし、その後、オーストラリア国内でも批判が出たのか、今のところ、ウィキリークスは閲覧する事ができますし、彼のパスポートが没収されたという話は聞いていません。

昨日、国営テレビABCで、このウィキリークス創始者ジュリアン アサンジ氏の逮捕を受けて、日本でいうところのクローズアップ現代のような番組で、そのことを取り上げていましたので、その内容をご紹介します。

彼の弁護人及び彼を支援するジャーナリスト達(一部は番組以外の支持者)の主張は以下の通りです。

(1)イギリス当局の彼を逮捕した理由が「スエーデン当局から起訴された2人の女性に対する暴行容疑」であるが、これはありもしない容疑であり、政治的に彼を拘束してウィキリークスの活動を阻止しようとするものである。

(2)アメリカ政府や一部の米上院議員は、ウィキリークスを「情報テロ」と非難するが、そもそも、彼(ジュリアン アサンジ氏)がウィキリークスの運営でどんな違法行為をしたのか?法律を犯して内部情報を漏洩させたのは、各国の政府関係者であって、彼は、それを集めて公開しただけである。

(3)今回のウィキリークス騒動を受けて、各国で内部告発者を法律で厳しく罰する動きがあるが、それは、ジャーナリズムそのものを抹殺する行為につながりかねない。 何故ならば、ジャーナリズムの大きな役割の一つは、一部の正義感あふれる内部告発者によって、社会悪や不正を白日の下に晒し、これを広く社会に知らしめることで、時の権力者に立ち向かう事だからである。 そして、何よりも「言論の自由」なくして民主主義は成り立たない(そういえば、企業の不正に対する内部告発は法律的にも保護し、これを奨励しておきながら、国家の不正は断固口封じをするというのもいかがなものでしょうか)。

(4)今回の一連の漏洩情報公開の中で、例えばアメリカは、クラスター爆弾使用禁止条約を批准しておきながら、これを使用する事をアフガニスタン政府に働きかけていたことが公開されたが、これは明らかに国際条約に違反する行為である。

ところで、ここオーストラリアでは、今回の一連の漏洩情報公開で、一番のトバッチリを受けているのは、実はケビン ラッド外相(前首相)です。 彼は中国語が堪能で、彼が首相時代には中国との貿易を促進する為に、中国まで出掛けて行って中国語でスピーチまでして、中国とオーストラリアの“友好”と経済交流に力を入れる一方で、訪米した際には「中国は“脅威”である。 チベット問題や台湾問題では、場合によっては、アメリカはForce(軍)の行使も排除すべきではない」と語った事をウィキリークスで公開され、野党から「外相の資質に問題がある!」と非難轟々です。

外交では、2枚舌、3段腰は当たり前なので、別に驚くことではありませんが、ウィキリークスで公開されて、目をパチクリさせて、それこそヨレヨレになって記者からの質問に応じるケビン ラッド外相の姿に久々に腹を抱えて笑ってしまいました。

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