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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/02/02 06:07  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

ヨーロッパと日本の政策は間違い?!


おはようございます。

先週の英誌エコノミストにヨーロッパとアメリカの不良債権処理の対応の違いに関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

Mckinsey Global Instituteによれば、2008年以降世界的な債務が上昇していますが、ここにきてそれぞれの地域(記事ではヨーロッパとアメリカ)で差が出てきている事を指摘しています。

2008年以降、アメリカでは公的債務は大きく上昇していますが、その一方で金融機関、企業、個人ともに債務の残高は減っており、金融機関の債務は2000年の水準にまで減少しています。 また企業の債務は高くないにも関わらず更に減少しています。 また、個人の住宅ローン債務の残高は2000年から2008年にかけては30%上昇した後、2008年以降は15%減少しています。 

マッキンゼーによれば、アメリカの個人の債務削減のプロセスは3分の1から半分近くまで進んでおり、2013年半ば頃には、ほぼ完了すると予想しています(殆どのケースは個人破産による清算続きによって)。これまで600bnドル(日本円で約45兆円)の債務の約3分の2は、個人の破産処理によって処理され、更に250bnドル(日本円で約19兆円)は強制競売で破綻処理をされており、今後、更に破綻処理が進みそうです。

その一方で、ヨーロッパの債務削減のプロセスは殆どみられず、一部には逆に増える傾向にあります。イギリスの金融セクターの債務は2008年以降上昇しており、スペインに至っては、他の先進国対比断トツで債務が急増しています。 イギリス中銀は、イギリス国内の住宅ローンの12%は、何らかの清算処理をする必要があると指摘していますが、なかなか不良債権処理が進んでいません。

ところで、過去の不良債権処理の対応を1990年代のスエーデンとフィンランドの不良債権処理の成功例と失敗例から、比較してみます。 一般的には、債務処理のプロセスは次の2つのステージを辿ります。 第一段階の民間の債務を減らす過程では景気は低迷し、公的債務は急上昇します。そして第2段階の景気が回復することによってようやく公的債務が減少し始めます。 

1990年代のスエーデン(成功例)とフィンランド(失敗例)では、これらの対応が違いました。 まず、スエーデンは景気が回復するまでは、予算の削減をしませんでした。 そのおかげで債務処理もその後の景気回復も達成できました。 しかしフィンランドは景気が回復するまでに財政緊縮を行った為に、不況が却って深刻化してしまいました。

以上の事を現在に当てはめてみますと、現在のアメリカの政策は過去のスエーデンの成功政策を取っているのに対し、ヨーロッパの政策は、景気の回復を待たずに緊縮財政を行おうとしています(フィンランドの失敗政策)。

英誌エコノミストは、今、EUの政治家が、景気の回復を待たずに、緊縮財政を強力に推し進めようとしている事に強い懸念を表明し、それは更なる景気低迷のスパイラルに陥ると指摘しています。

そして、日本の野田政権が現在取ろうとしている政策は、景気の回復を待たずに予算の削減と増税を推し進めるフィンランドの失敗例と同じ政策を取ろうとしています。

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One comment on “ヨーロッパと日本の政策は間違い?!
  1. ペルドン より
    美意識の違い

    黄金分割のビーナス・・
    原始社会のビーナス・・
    どちらも・・
    崇拝者多数・・・

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