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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/06/05 09:38  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

ながたちょう花月


海外で暮らし始めて3年近くが経ち、だんだん日本の出来事に疎くなってきたのですが、風の便りに聞けば、こたびの東日本大震災や、福島第一原発事故の惨状を受けて、何かとふさぎがちな日本を、東日本のみならず日本全国を笑いと元気を振りまこうと、関西の「うめだ花月」や「なんば花月」よろしく「ながたちょう花月」が出来たとか(まちがっていたらすみません)。

先週に、こけらおとしの公演があったそうで、何でも超満員御礼で、入り切らない人々が道にあふれ、電気屋のテレビの前には黒山の人だかり。全国のテレビの視聴率は40%を越える程の人気だったとか。 内容は、「笑いあり、人情あり、涙あり」では飽き足らず、人間の出せる感情全てを網羅するすごい公演だったと、私の住む地球の裏まで聞こえてきました。

舞台は、「みんしゅう一家」と「地味一家」の任侠物語だったでだそうで、もともと寄せ集めで一家の結束の弱い「みんしゅう一家」は、1000年に一度の大地震と、発電所で使われていた“絶対安全”だったはずのピカドンという爆弾の原材料が道にあふれ出し、人々は逃げまどう中、その対応が後手、後手に回り、その対応のまずさから、「みんしゅう一家」の親分衆からも組長交代の声が上がっていたのでした。 それに乗じて、かつては全国統一を成し遂げたものの、いまやその影もない「地味一家」が「みんしゅう一家」の分断分裂を図って、一部の「みんしゅう一家」の親分と内通し、全国親分衆会議で「みんしゅう一家」組長解任を提案する処から芝居が始まります。 その間、領民は、食べ物も住む家もなく、益々、疲弊していくのでした。

第一幕:(「みんしゅう一家」組長宅の密室)
明日の全国親分衆会議で、「みんしゅう一家」組長解任が議題にされ、この採決が取られた時には「みんしゅう一家」の多くの者が造反する事が確実となり、この情勢を嘆いたのが「みんしゅう一家」を創業した一人の親分でした。 彼は、全国親分衆会議前夜、ちょうど昨年のこの時期に禅譲した今の組長に、
「『みんしゅう一家』を分裂させるようなことなっては、元も子もない。ここは、身を引いてもらえないか」と直談判し、事前に用意した確認書を差し出すのでした。
その後、ツケ人を交えて「ハイレベル」の高度なやり取りの末、組長は、「分かりました」と渋々了解。
そこで「みんしゅう一家」創業者は「では、この確認書に血判しよう!」と提案。
今の組長「いや、それに及びません。お互い“信頼できる仲”ではありませんか!」
元来、友愛を是とする「みんしゅう一家」創業者は、この言葉を“信じて”、お互いに固い握手をして、第一幕は終わります。

第2幕:「みんしゅう一家総会」
全国親分衆会議を前に「みんしゅう一家」全員を集めて決起集会が開かれ、その中で「みんしゅう一家」の組長は、親妙に、そして切々と組員に訴え続け、スピーチの終わり近くになって、しばし沈黙の後、「一定の目途がつけば、ここは若い衆に責任を譲りたい」と眼にはうっすら涙を浮かべながら、今日の全国親分衆会議では半対票を投じるように訴えて、スピーチを終えたのでした。
更に、組長のスピーチの後には「みんしゅう一家」創業者が、「組長がそこまでおっしゃったのだから、ここは、皆で一致団結して反対しよう」と呼び掛け、会場は、一気に興奮が高まり、割れんばかりの拍手と気勢を上げて第2幕は閉じます。

第3幕:「全国親分衆会議」
会議の冒頭に「みんしゅう一家組長」解任動議が出され、「地味一家」副組長が解任動議賛成意見を、ドスの利いた声で、滔々と「1つめに、、、、2つ目に、、、、3つ目に、、、、」と合わせて9つに亘る賛成理由を、長々と時間を遥かに越えて述べたのでした。
これに対して、「みんしゅう一家」の反対意見を述べた若頭は、時々関西なまりを交え、悲鳴にも近い甲高い声で反対理由を述べ、最後には、演台に頭を打ちつけてまでして「地味一家」そして自分の出身である「みんしゅう一家」の皆々衆に「反対」投票を懇願し、「そこまで反対票に投じることを訴えるか」とその場に居合わせた人々の涙を誘ったのでした。

そして、こうした甲斐があって「全国親分衆会議」では、見事に「みんしゅう一家」親分解任動議は否決され、会場は大きな喜びと安堵が広がって第3幕は閉じます。

通常、「うめだ花月」や「なんば花月」では、ここで「良かった、よかった」、「笑いあり、人情あり、そして涙ありの、え〜芝居やったなあ!」で席を立つのが普通ですが、今度、新しく出来た「ながたちょう花月」は、それでは終わらないのが、斬新であり、すごいところなのです。

第4幕:
みんしゅう一家組長: 「あ〜、やれやれ、さあ、また、これから組長職を頑張るぞ!」
周りの記者:「 組長は、おやめになるのでは?」
みんしゅう一家組長:「誰が辞めると言った??」
周りの記者:「ですが、辞意を表明されたのでは??」
みんしゅう一家組長: 「いいや、言ったのは、『一定の目途が立てば、若い衆に責任を引き継いでもらいたい』と言っただけで、『辞任』何て一言もいっていない!」
周りの記者: 呆れて物が言えず「 ・・・」
みんしゅう一家組長: ニヤニヤとご満悦の様子。

これに、業を煮やした「みんしゅう一家」創業者は、「みんしゅう一家」組長を「ペテン師」と罵り、今度は、「みんしゅう一家」の内紛へと様相は展開し、これを見ていた「みんなの一家」親分は、眼をパチクリしながら「だます方もだます方だが、だまされる方もだまされる方だ」とつぶやきながら、第4幕は閉じます。

結局のところ、第2幕の「みんしゅう一家」の親分と創業者のスピーチに心を動かされ、不覚にも第3幕の若頭の反対意見演説に思わず涙した私もやはり「だまされる方もだまされる方だ」だったようです。
これでは、腹が立って「席を立て」と言われても立てません!
金返せ!(税金返せ!)!!

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2 comments on “ながたちょう花月
  1. ベルドン より
    花月

    失礼ながら・・
         力作ながら・・
    この台本・・
        かなりの・・朱筆が・・
    と言うのも・・
        その一人・・親分さん・・
    大の碁好き・・先手先手と読むのが・・
    打つのが・・大好き・・
    岡目八目・・

    今一度・・御参考にまで・・・

    http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/06/post_264.html#more

  2. st より
    どちらが悪いか

    そりゃー、だます方が悪いと思う。

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