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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/05/27 05:33  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

ユーロ当事者の3つの大きな思い違い!


おはようございます。

今週号の英経済雑誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介します。

雑誌では、5月上旬に750bnユーロの通貨安定化支援策に続いて、ドイツやユーロ議会でHF(ヘッジ ファンド)やプライベート エクイティ等の投資を規制する議論が出ていることについて、「今、ユーロ当事者は、3つの大きな思い違いをしている」と主張しています。

まず、一つ目の大きな思い違いは、「ユーロ当局者がヘッジ ファンドや、プライベート エクイティのユーロ圏内での活動を規制しようとしているのは間違いである」としています。

ドイツの今回のネイキッド ショート(手元に現物のないカラ売り)の禁止は、実際にはドイツ国内だけの規制であって、取引の多くは(全体の約80%)はロンドンでされており、こんな禁止事項は意味がないとしています。 またドイツ当局もその事は十分承知で「今回の禁止がギリシャのソブリン問題に与える影響は少ない」と認めています。 また「この禁止の影響があるとすれば、ドイツ国内でのドイツ国債売却が困難になるだけである」と、この禁止の限界と問題を認めています(それでも、政治的にはやらざるを得なかった政治的背景があったようで、「DO!Anything!(やれることは何でもやれ!)」の世論に押し切られた形です。

このように、「ユーロでは、ヘッジ ファンドやプライベート エクイティを悪者扱いにして自分たちを被害者のように考えるのは、大きな思い違いである」と雑誌エコノミストは指摘しています。 何故ならば「これまで、遅々として進まなかった財政規律の回復が、今回の危機でようやく動き始めたのは、彼ら(ヘッジファンドやプライベート エクイティ)がギリシャ国債を売り叩き、ユーロを売り叩いたおかげではないか?」 と、皮肉を交えながらユーロ当事者のこれまでの不作為を厳しく批判しています。

2つ目の大きな思い違いは「今回のギリシャ国債の破綻危機は、本質的には債務不履行の問題であって、流動性の問題はないにもかかわらず、ユーロ当事者はこれを混同して、ユーロを守るために出来る事は何でもやろうとして、新たに余計な問題まで引き起こしている」と批判しています。 

つまり、「今回の問題は、ギリシャの国債の発行残高(借金)が多すぎて、彼らが発行した国債が額面通り償還されない(もしくは利払いが滞る)可能性があること」が問題なのです。 

逆の言い方をすれば、「ギリシャ国債がデフォルトすれば、それを保有していた人の債券の何割かが返済されないだけの事」と言うこともできます。 にもかかわらず、今、ユーロで起こっている議論は、銀行間の貸借取引にヘアカット(取引相手の信用に応じて掛け目をつける事によって相手の信用の低さを補完する)をつける議論にまで及び、これまで通常にされていた銀行間の貸借取引が枯渇し、銀行の資金調達にまで影響を及ぼし、一部の銀行では日々の調達に支障が出始めています(こうした問題は、ギリシャ ソブリン問題でもユーロ通貨問題でもありません。 いらぬ余計な議論を始めたばかりに新たな問題まで引き起こしてしまっているのです!)

そして、最後に最も大きな思い違いは、「ユーロの基本的な枠組みそのものを改革する必要もないのに、今、そうした議論が起こっているのは、とんでもない思い違いである」と主張しています。 

つまり、今回、「そもそも何が問題なのか?と言えば、財政規律に対して怠慢な国(ギリシャ、ポルトガル、スペイン)が、財政削減しなかった事が問題なのであって、逆の言い方をすれば、これらの国が財政再建さえすれば、ユーロそのものの仕組みは何も問題がない筈である。彼らが財政削減をし、税金を上げ、賃金を下げ、国際競争力をつければ、財政規律回復の道筋が見えてくる。事実、今回のユーロ安で、これらの国の競争力は大幅に改善している。」と指摘しています。 

そして「今、必要なのは、ドイツもこれらの怠慢な国と一緒になって財政削減をするのではなくて、逆にドイツは内需を拡大して(財政出動をして)、これらの国から物やサービスを買うべきある。」としています。

最後に、「(EUの政治家や当局者が)ロンドンのヘッジ ファンドを非難することで、自分たちの無知を覆い隠そうとするのは、何とも哀れなことである!」と雑誌エコノミストは嘆いています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “ユーロ当事者の3つの大きな思い違い!
  1. 松下健一 より
    まったく同感です

    基本的には南欧諸国が放漫財政を改めれば良いだけの話ですし、ドイツが一人で黒字ため込みをやめる事が解決の道・・なのは長い目で見れば正解ですね。
    今起きている騒動は南欧諸国の債券を抱えている銀行が危ないんではないか・・との疑心が広がっている。ヨーロッパ全体が1997年末ごろの日本みたいな状況になっているんでしょうね。
    当時、某建設会社の経理責任者だった私は生きた心地がしませんでした。なにしろ取引していたゼネコンや銀行がバッタバッタと倒れていきましたから。

  2. ぺルドン より
    オォ・・ユーロー

    ポンドの国から・・単純にして・・明快な指摘・・エコノミスト・・岡目八目か・・英国流毒仕込みは・・間違いない・・

    シーザーの貨幣は・・ローマ帝国が背景で・・流通した・・
    ユーロは・・その背景が無い・・ローマ帝国がない・・便利だが・・エスペラントだ・・
    ユーロが・・複数の国々を統治出来ない・・
    特異な通貨は・・いずれ・・駆逐されるのでは・??・・・

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