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2019/11/19 06:07  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

米中貿易戦争、フェーズ1の動向


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

中国とアメリカの貿易に関する紛争は、経済大国同士の正面衝突にはならなかったが、これまでとは全く違った交渉スタイルの様相を呈している。その一面として、トランプ大統領はツイッターの中で、中国の称賛と中国への攻撃を繰り返してきた。また別の側面では、中国の官僚たちも同様のメッセージを述べ、その内容は「貿易交渉に至る為にも関税は取り除かなければならない」というものであった。前月、ようやく決着をみた「ミニ取引:mini-deal」では、お互いに対照的なアプローチとなって表れた。

そのミニ取引の概要は、トランプ大統領に依れば「中身のあるフェーズ1の取引」となって明らかにされた。それによれば、中国はアメリカの農産品を買い、アメリカは中国に対する更なる関税をかける事を控えるというものであった。この基本合意では、両者は中国がアメリカの産業をより支援することに重きを置いたものであった。しかし、今回の貿易戦争勃発以降にある大きな問題は2つあり、一つは「予測可能である」という点であり、もう一つは「予測不可能である」という点である。

現時点でわかることは、今回のミニ取引の詳細の欠如が、2国間の相違の大きさを隠している。トランプ大統領は、今回の通商交渉は「懇親会:love fest」であったと述べ、中国はアメリカから40~50bnの農産物を買うとし、貿易戦争前の2倍以上になるとしている。しかし、彼が、この取引で、ほくそ笑めばほくそ笑む程、中国はより態度を硬化してきた。幾つかの情報によれば、中国の交渉官は、このミニ取引を結べば、アメリカは新しい関税を控えるのではなく、現存する関税を撤廃しなければならないと要求している。

しかし、今回の中国の戦略は反故にされるかもしれない。11月4日のトランプ政権高官は「アメリカと中国のフェーズ1の取引は、9月1日に112bnの関税をかけた状態に逆戻りするかもしれない」繰り返し述べている。中国は、11月5日にWilbur Ross商務長官が仄めかしたアメリカの液化天然ガスの購入などの何らかの甘い話を提示するかもしれない。しかし、関税の引き下げはアメリカの譲歩となってしまうだろう。アメリカの首席通商交渉官Robert Lighthizer氏の以前からのスタンスは、中国が全ての問題に対してアメリカに敬意を払ったものであること(有利であること)を確認するまで関税は維持するというものであった。

予想不可能な問題は、中国の抵抗の大きさである。11月中旬にチリで開催されることになっていたAPECサミットで、トランプ大統領と習近平国家主席との間でこの「ミニ取引」について会談が期待されていた。しかし、開催国チリは、このサミットを中止してしまった。その結果、これら両国リーダー達が、何処で、そしていつ会談が行われるかは先送りされてしまった。トランプ大統領の気ままな性格を考慮すれば、中国は、両者の直接会談をする前に、当事者間の交渉で政治的な勝利(決着)を望んでいる。

中国は、このミニ取引の中に、アメリカのビジネスにとってより美味しいものを加えるかもしれない。しかし、たとえ、今回のミニ取引が何の障害もなく署名されたとしても、この貿易戦争が終結するには程遠い。数百兆ドルもの中国輸出が関税の影響を受け、企業は、貿易戦争が再び逆戻りするかもしれない不透明さの中で生きて行かねばならない。更に、トランプ氏は、次々と、最後通牒を繰り出すかもしれない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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