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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/04/06 05:40  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

ソマリア通貨と「ユーロ」、そして「円」


おはようございます。

読者の皆様も良くご存じのように、ソマリアでは1990年代に政府が崩壊して以来、無政府状態が20年近く続いています。 以前から興味があった事なのですが、私は、20年も政府が存在しない国で、どうやって経済が、あるいは紙幣が流通しているか関心がありました。 たまたま、今週号の英誌エコノミストで、そのソマリアの通貨事情に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。 読者の皆様な「私達日本人は世界最強の通貨「円」の下で暮らしており、無政府状態に陥った国の通貨の話など、何の足しにもならない!」とお考えかもしれませんが、それが、どうしてどうして、それがなかなか含蓄ある処、大なのです。

一般的には、紙幣に対する信頼が落ちると(中央銀行が何の裏付けもなしに通貨を大量に発行すると)、かつての第一世界大戦後のドイツで起こったような超ハイパーインフレが起こり、それこそリヤカーで札束を運ばないといけなくなってします。 また、紙幣の信用が無くなると、人々はそれに代わる「金(きん)」や、米などの物々交換で決済するようになります。 最近では1998年にロシアの通貨ルーブルが崩壊した際には、ロシアの労働者は、給料をルーブルの替わりにピクルス(野菜の酢漬け)で支払われた例もありました。 

さて、今日のソマリアですが、無政府状態になる前は、ソマリア シリングが流通していましたが、政府が崩壊した際には当然のことながら紙クズとなって暴落し、そここそ第一次世界大戦後のドイツのようにリヤカーで紙幣を運ばなければなりませんでした。 しかし、その後、ソマリアの造幣局が破壊された為にシリングの印刷が止まってしまい、一方で、ソマリア シリング以外には米ドルが流通していますが、これは貿易や大口取引に使われる為、国内では極端に不足してとても末端にまで流通しません。 また、旧政権崩壊後に出来た新しいゲリラ政権が紙幣を印刷しても紙幣の質が悪い上に偽札が横行し、結局の処、ソマリア国内では20年以上も前に崩壊した旧政府のシリングが今でもの流通の中心となっています。 

そんな、現存しない政権が発行した何の裏付けもないソマリア通貨シリングを流通させている状況を見て、英誌エコノミストは、「まるで『貝殻かビーズ』で売り買いしているようなものだ」揶揄しています。 また、読者の皆様もそんなソマリアの状況を腹抱えてお笑いになったかも知れません。

しかし、世界の通貨情勢は、ソマリアの通貨情勢をみて腹抱えて笑っていられる程、暢気な状況でなくなってきているように思います。 例えば、今、ヨーロッの通貨「ユーロ」もそうですが、振り返って、私達の「円」に関しても、一体、何の裏付けがあって人々はこれを信用して流通させているのでしょうか? 

表向きは、現政府の統治力と徴税能力、中央銀行の通貨管理能力、更にはそれぞれの国の生産力(GDP)を信用して、私達が毎日使っている紙幣は、世界の他の人からも認められて(信用されて)、その価値は変動することはあっても、全く信用されなくなることはない」と、ある種の宗教にも近い信念の下で使っているのですが、本当にそうでしょうか?あるいは、未来永劫にそうあり続けるでしょうか?

実は、今、私達が信じてやまないこうした信念が、ジワリジワリと綻び(ほころび)初めて来ているように思います。そして、その綻び(ほころび)きった先には何のことはない、先程、「貝殻やビーズと同じ!」と腹を抱えた笑ったソマリア シリングとあまり変わらないヨーロッパの通貨「ユーロ」があり、それに続く「米ドル」や「円」の姿を想像してしまうのは私だけでしょうか。 

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2 comments on “ソマリア通貨と「ユーロ」、そして「円」
  1. ペルドン より
    通貨

    では今から・・
    貝殻やビーズを・・
    集めておきませんか・・・?!

  2. st より
    通貨は実体経済によって支えられている

    インフレやデフレで経済を語るのは意味がないのでは、オートメーション化でこれだけ物がいくらでも作れる実体経済があるんですから、逆も真なりです、日銀や金融関係の方々はそんなに偉そうにはできないのでは。

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