2019/10/25 06:05 | 昨日の出来事から | コメント(0)
アメリカ経済の現状は?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
金融市場は2018年初め以来、何度もパニックに陥った。 その多くは、トランプ大統領の中国との貿易を巡る紛争をきっかけにしたものであった。そして最近のアメリカの景気指標は景気拡大の勢いを失いつつある。最も悪い数字は製造業に関するものであり、夏以降の成長は半減している。FRBによれば、7月の製造業が低下し、9月のISM-シカゴ ビジネス サーベイでは2009年以降で最も低い水準まで下落している。
10月4日に発表された雇用では、8月から10月にかけて製造業の雇用は2,000人減少している。アメリカの製造業の中心地であるインディアナ州やミシガン州は2016年のトランプ大統領の勝利に大いに貢献したが、この地域の雇用の低迷は一層深刻になっている。
製造業は政治的に影響力のあるセクターである(組合がある為)。しかし、アメリカの雇用の90%はサービスなどの他の産業である。次に何が起きるかは、製造業における弱さが更に広がるかどうかにかかっている。しかし、今の処、そうした広がりは起こっていない。第3四半期の民間の雇用は前年同期の527,000人から358,000人に減少している。しかし、それでもまだ雇用は前年比増加している。失業率は3.5%まで低下し、1969年以来の低い水準である。
アメリカ経済の大きなエンジンは個人消費であり、まだタンクには燃料が十分にある。2019年第2四半期の個人消費は年率4.6%であり、投資や輸出の減少を十分にカバーしている。家計債務の水準はかなり低く、所得も増加している。
しかし、こちらでもあちこちに問題を抱えている。9月のサービス セクターの指数は失速し、新規ビジネスに関する指数は、指数が始まった2009年以来最も弱い水準となっている。 堅調な教育や健康のセクターを除いた民間の雇用は低下傾向にある。9月の賃金の伸びは8月の年率3.2%から2.9%まで低下している。
しかし、失速したからと言ってマイナス成長ではない。9月の賃金の成長の低さは管理職の賃金増加の低迷を反映したものであり、管理職以外の労働者の賃金が低迷したのではない。製造業が低迷する中、消費者がアメリカ経済を下支えした事がある。それは2016年に製造業の生産と雇用が下落し、成長と雇用も低迷したが、それでもプラス成長であった(個人消費が下支えした)。そして翌年には両方とも回復した。
とはいえ、2016年と同様の事が起きるのは難しいかもしれない。アメリカの工場は、世界規模の製造業の失速や、貿易の低迷によって打撃を受けている。2017年当時は、中国政府が内需拡大を推し進めたことによって世界貿易が力強く回復した。つまり2015年、2016年に沈んだ経済が2017年に大きく成長した。現在の貿易戦争の奇跡的な解決でも見ない限り、今回も同様に回復する事は困難であろう。
更に2017年には、アメリカ経済はトランプ政権の減税政策のおかげで景気回復した。しかしこうした財政政策のインパクトは今年の第2四半期でピークを付けた。2020年までには、連邦予算は景気に対して追加されるよりも減額される見込みである。民主党は大統領弾劾手続きをとる構えを示し、議会は停滞しているので、更なる財政による景気刺激策の見通しは暗い。
恐らく最も起こり得るのは、アメリカ経済は景気後退に陥ることもなければ、今後、2020年11月の大統領選挙に向けて活力を取り戻ることもないだろう。しかし、トランプ氏にとって僅かばかりの慰めがあるかもそれない。それは、(前回の大統領選挙で)ヒラリー クリントン氏を打ち負かすような強い経済を訴える事によって2016年とよく似たシナリオが(政敵である)民主党から起こるかもしれない。しかし、それは、広範囲にわたるものでもなければ、前向きなものでもなく、ましてや驚くべきものでもない。(前回、大統領選の勝利に貢献した)景気問題は、今回はトランプ氏が期待しているような選挙材料にならないであろう。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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