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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/09/13 05:56  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

視界不良の貿易戦争


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

ドナルド トランプ氏は、世界貿易体制が揺らいだ結果に対する解決策として「関税引き上げが必要だったと私は思っている」と述べた。 この彼のコメントは、8月26日にフランスのBiarritzで開催された先進国G7ミーティングの終わりの部分で、(中国との)酷いアナウンスのやりとりの中でなされた。そして、まだ、多くの乱高下は待ち受けている。

このドラマは、8月23日に、中国が、それ以前にアメリカがかけた関税に対する報復計画を発表した時に始まった。アメリカからの輸入品に対する平均関税は9月1日時点ではそれまでの20.7%から21.8%に引き上げ、その後は12月15日には25.9%に引き上がる。これによってアメリカの中国に対する輸出の66%が影響を受ける事になる。

航空機、自動車部品、医療品にその対象は広がり、その結果、中国経済もダメージを受ける。事前に発表され、その後は友好の証として中断していた自動車やその部品については、12月からの関税が実行される。

その数時間後、トランプ氏は反撃に出て「中国は政治的な動機で動いている」と、あたかも自分はそうでないかのように批判した。 彼は、更に対抗措置として、中国から輸入品500bnドルに対して5%の超過関税をかけることを発表した。今年末までに、中国からの輸入品に対しては、トランプ大統領が貿易戦争を始める前の3.1%から24.3%まで引き上げられることになる。恐ろしいことに、彼は1977年のIEEP法(International Emergency Economic Powers Act of 1977)に言及して、更に厳しくするとツイートした。この法律はその言葉が示唆するように、大統領が緊急的にその権力の行使を保証するものである。過去には、1997年に、ビル クリントン氏が、この法律を使ってスーダンとの全ての通商のやり取りを禁止した。

アメリカ株がこれを受けて下落した。中国高官は、株価下落は、アメリカの貿易戦争による自己毀損の証拠であると誇らしげであった。しかし中国政府は、あえて大きく報道する事を控えたように思われる。中国国内メディアは、トランプ大統領が中国の習近平国家主席を「敵」であるツイートした事を殆ど流さなかった。

数日後、トランプ大統領は口調を和らげ、中国と有益な話し合いを強調した。代わりに、日本との貿易交渉に話題を切り替え、その中で、ディールは9月に決着するとの希望を述べた。アメリカ通商代表Robert Lighthizer氏は、「交渉では、産業関税、デジタル貿易、農業についてなされている」と述べた。トランプ大統領を喜ばせたものとしては、日本がアメリカのコーンを積極的に買う事を約束した事がある。

EUとの貿易緊張もやや緩和し、7月に施行されたフランスのデジタル税が、アメリカの企業が不当に課されているかどうかを調べることに着手した。デジタル税に対してトランプ氏はフランスのワインに報復関税をかけた。しかし、実際には関税の応酬を避け、フランスは、代わりに、かつて多国間で同意していた税金免除を復活させ、更には、二重課課税回避のための税の還付を加えた(アメリカ企業を優遇する措置)。

トランプ氏は、彼が相手国を批判する代わりに、相手国との貿易の再構築に一層踏み込むことでG7のヒステリックな週から収まりつつあるように思われる。G7の週末に合意された内容は、あまり内容のあるものではなかった。しかし、日本やフランがアメリカの関税の脅威を鎮静化させる為にアメリカに妥協した事自体は正しいことではないかもしれないが、中国にも同様の事をするであろう。その事で、少なくともアメリカはとてつもなく無理な要求はしないだろう。しかしながら、彼(トランプ氏)は、自分がディールのうまいことをしばしば自慢するので、彼の休戦は一時的なものに終わる傾向がある(やがて次のディールを始めるであろう)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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