2019/06/25 05:36 | 昨日の出来事から | コメント(0)
市場が、Fedが9月まで利下げすると信じているのは何故か?!
先週号の英誌エコノミストの掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
RRBは方向を変えつつある。12月にはFedは2019年に政策金利を2回引き上げ、政策金利は2.75~3%になると見込んでいた。3月には政策金利を引き上げずに金利を据え置いた。今や、投資家は6月のミーティングでは20%の確率で政策金利が引き下げられ、9月までには95%の確率で政策金利が引き下げらされると信じている。また、Fedの議長Jerome Powell氏は、「行動する準備(政策金利の引き下げの準備)は出来ている」と言っている。
金融政策転換の理由は、アメリカと中国の貿易戦争が終結出来ないことから経済が悪化しているからである。しかし、大騒ぎしているにもかかわらず、アメリカの実体経済のデータはまだ目に見えて現れていないし、今の処、かなり軽微である。確かに5月の雇用統計では7.5万人しか雇用が増えておらず、事前の市場予想を下回ったのは初めてであった。しかし、雇用のデータは振れが大きいし、失業率は3.6%と非常に低い。
貿易戦争の痛みは、むしろ金融市場に表れている。例えば10年国債の利回りは5月初めには2.5%であったが、現在は2.1%まで利回りが低下している。背景には投資家が安全資産にシフトさせたことと、政策金利引き下げ期待があるからである。こうした相場上昇に対し、Fedに対する不愉快な疑問から起こってくる。 もしFedが市場に屈するならば、金融政策のリスクは市場のトレーダーによって引き起こされているのであろうか?あるいは、Fedが経済動向を後追いしている為に市場の動きに対して遅れるのであろうか?
市場は、お金に絡んだ群衆の知恵を供給してくれる。その知恵の多くは何もしないよりも運用パフォーマンスがいい。
一つ目は、実は、Fedの動きと市場の動きに実質的な違いはないのである。 例えば、Fedが、貿易戦争のように、リスクについて市場と同じ判断をすることを想像してみて欲しい。ドイツ銀行のエコノミストTorsten Slok氏は「Fedには市場に比べてより多くの時間の余裕がある」と述べている。つまり、政策を変えるまでに何が起きるかを見ることが出来るが、投資家は、実際には起きそうでないことであったとしても何かに対して直ちにヘッジをしなければならない。
2つ目には、市場は、経済見通しについてはFedの考えに同意している。しかし、市場は、Fedがどう行動を起こすかについては混乱している。前政策決定のメンバーであったFrederic Mishkin氏は「Fedは市場とうまくコミュニケーションを取ることが出来なかったからかもしれない」と述べている。
もし、これらの可能性がはっきり出来るならば、中央銀行は市場が成長やインフレについて何を語り、何を聞こうとしているか結論付けることが出来る。しかしこのシグナルを識別することは、Fedがマーケットに対して反応すること以上に悩ましいのである。例えばFedがマーケットの動きを完全に無視することを想像してみて欲しい。そして実際の成長やインフレのデータにのみで政策を決定することを想像してみて欲しい。そうするとFedの政策に関する如何なる変化は、こうした様々なデータが変化した時のみFedの政策が変更される。コロンビア大学のCharles Calomiris氏は「もしFedの政策が明快で、システマチックであれば政策決定者は市場から有益な情報を集めることが出来る」という。Fedの議長であったAlan Greenspan氏もかつて指摘したように「Fedが市場に素直に反応すればするほど、Fedは自分の鏡を見ているようになる」と述べている。
もし、金融政策が完全に自動化されると、市場で作られた情報は有益かもしれないが、それは使われないであろう。何よりも、実際のデータのみで反応することは、バックミラーだけで運転するようなものである。中央銀行はしばしば「金融政策は18か月もしくは2年のラグで動いている」と述べている。それ故、多くのエコノミストは、こうしたFedの不器用さが戦後のアメリカの景気後退の原因であると信じている。
もし、Fedが市場から本当の意味で有益な情報を集めようとするならば、市場と迎合することは出来ない。Mishkin氏は「Fedは、尻尾をふる犬である必要がある」と述べている。しかし、市場の動きが、今日の様に貿易戦争のように明確であり、その反応が厳しい時には最終的には金利の引き下げがあるのであろう。しかし、イベント(政策金利の引き下げ)を予測したことで起こる次のリスクはインフレが勃発することである。経済データが明確なストーリーを語る延長線上にはインフレが内包されている。例えば、5月の消費者物価は、1.8%であった。これの意味する事は市場が期待する金利引き下げに対してFedが行動するであろう数字よりもいい数字であった(このインフレ率ではFedは政策金利を引き下げないし、実際に先週のFOMCでは、政策金利を引き下げませんでした)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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