2019/05/24 05:43 | 昨日の出来事から | コメント(0)
間違った警告?!
先々週号の英誌エコノミストに現在のアメリカ経済に関して掲題と称する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
投資家は、今年になってアメリカ経済のリセッションを抱き始めた。ドイツ最大の銀行ドイツ銀行のTorsten Slock氏は「顧客は、世界について悩んでいる。金融指標は赤信号が灯り、株価は弱く、格付けの低い社債の利回りは急上昇している。昨年12月にFRBは政策金利の引き上げを決定したのは驚きに値しなかったが、市場からは歓迎されなかった」と述べている。
昨年末には、JP Morgan Chaseのエコノミストが、S&P500や社債のスプレッドをベースにしたモデルでは、12月か月以内にリセッション入りする確率は65%であった。しかし、市場のムードは改善した。4月29日現在では、このJPMorganのモデルでは、リセッション入りする確率は15%にまで低下している。
Mr Slack氏は「シナリオが如何に急速に変化したか、我々は目を見張っている」と述べている。市場センチメントが改善した理由の一つは、Fedの金融政策のスタンスの変化である。1月にFedはそれまでのタカ派からハト派に転換し、2019年の政策金利引き下げを放棄した。FRB総裁Jerome Powell氏は5月1日に現行政策金利維持を決定した後、「我々は、経済が過熱している如何なる証拠を持っていない」と発表した。また、彼は、金利上昇を保証する経済データもないと繰り返し述べた。
投資家は、Fedの政策金利引き上げをしなかったことを喜んだ。しかし、その時期やムードの変化は、それだけの要因だけではなかった。一つの可能性としては、それまでの弱気ムードそのものが服飛ばされてしまったのかもしれない。CitiグループのCatherine Mann氏は「12月の急落は、単にカレンダー要因だった」と述べ、投資家は、税金対策でポジションを落としたと説明している。即ち、当時は逆イールドであり(これは、長期金利が短期金利の利回りを下回り、歴史的には景気後退のサインとされ)、警告のベルが鳴り続けていた。しかしMann氏は、こうした将来予想の力が、中央銀行に金利を押し下げる圧力をかけ続ける事を疑問視していた。
当時の実態経済は、下降傾向の兆候を見せていた。しかし、ビジネス信頼感指数は失速し、しばしば経済問題の先行指標となる住宅市場は下降していた。更に、2019年初めには、更に悪いニュースが出て、一部の政府機関が閉鎖され、ビジネスや消費者のセンチメントを悪化させた。経済は、いたるところで冷やされ、トランプ政権の財政刺激策は後退した。景気失速のソフト ランディングからハード ランディングになるのは避けられないと思われた。
JP MorganのエコノミストJesse Adgerton氏は、「それでも、まだ警戒すべき理由が残っており、特に製造業のビジネス 信頼感指数に顕著に表れている」と述べている。しかし、最近の指標はバラ色に見え始めている。消費者センチメントが反発した。3月雇用統計も2月の急落から回復した。第1四半期のGDPは3.2%で、景気失速の要因を持ち合わせているが、最近の傾向は、回復基調にある。
株式市場の投資家は、心配を全て忘れてしまったかのように見える。そして、経済は収益を上げる程度に成長する一方で、Fedが介入しない(政策金利を上げない)程度の速さで成長すると信じているように見える。債券の投資家は景気に対して警戒的である。彼らは、いまだに今年末までの政策金利を最低でも1回引き下げる事に賭けている。
今の処、Fedは、静観を決め込んでいる。去年、株式市場が急落して以来、別の難題がより明確に浮上している。Fedが2%程度まで上昇すると期待しているインフレは、価格変動の激しい食料品やエネルギー を除くベースで3月には1.6%まで下落した。5月1日には、Powell氏は「インフレは過渡期であることを期待できるよい理由を見つけた」と述べた。しかし、経済が期待通りに2%インフレに向かっている動きが無い。確かに、Fedにとっては差し迫ったリセッションに直面するよりはマシかもしれない。しかし、やはり、それはそれで問題である。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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