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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/05/16 05:44  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

外国為替市場の現状


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

現在の外国為替市場は、その規模が巨大であるにもかかわらず、不透明であり時代遅れである。1日に取引される5兆ドル(約日本円で550兆円)の殆どは取引所を通じて行うよりも寧ろ「店頭取引」といって銀行と個人の相対取引で行われている。その多くの注文は今もって電話で行われている。更にマーケットの規模やその取引の仕組みは時代遅れの方法に頼っている。BIS(国際決済銀行)による市場総括は3年に1度行われるだけである。

外国為替市場の近代化は、今もってのらりくらりである。先月、ヨーロッパで3番目に大きな株式取引所Deutche Borseは、FXの電子取引のプラット フォームFXallを3.5bnドルで買収しようとしている。もし、これが実際に行われれば、Deutche Borseの歴史の中で最も大きな買収の一つになるだろう。

FX市場は投資家の為だけでなく、企業や政府が貿易を守り、あるいは通貨スワップつきの債券を守る為にある。外国為替取引には、通常、スポット取引、フォワード取引そしてスワップ取引がある。ディーラー(主に銀行)を通じて行われる取引は流動性供給の源となる。 キャッシュ フローの日付をマッチングされるような特殊なニーズに対しては、取引所よりも容易に取引記録が残せるOTC(店頭市場)が利用される。

これは変えることが出来そうにない(取引所ではそうしたマッチングは容易でない為)。むしろDeutche Borseは、通貨の買い手が、銀行にあれこれ電話して注文することを放棄し、代わりに、多くのディーラーからの値段をプールしたデジタル プラット フォームを買おうとしている。その傾向は、既にFXのスポット取引では増加している。その取引高は過去10年で2倍になり、電子取引はFX全体のシェアの40%に達している。

しかし、フォワード取引のような期間の長いFXのデリバティブ取引については、電子取引のシフトは進んでいない。取引が少なければ少ない程、電子トレードが機能する為の十分な取引相手を瞬時に見つける事がより困難だからである。更に、市場変化の妨げになることがある。それは、厳しい規制が、アセット マネージャーが取引を手仕舞いしたい時のコストを引き上げる。ヨーロッパの規制当局は、アセット マネージャーに対して、それぞれの取引が顧客にとって一番いい価格で執行した事を示すよう求めている(投資家保護の観点から)。買い手を瞬時に多くのディーラーと結びつけることによって、E-トレードは、これらの決済と規制当局の監査の両方を満たすことが出来る。長期にわたる取引も次第に一般化し、流動性も増加している。

FXが電子化されるにつれて、ディーラー間の競争も激しくなっている。スポット取引については、自らのアルゴリズムを使って自己アカウントで売買する銀行以外の企業に門戸を開いた。と同時に銀行間の競争も過熱し、取引の鞘はなくなり、多くの銀行は撤退に追いやられている。その一方で、銀行によってはトレーディング企業と提携して大量の取引を可能にしている。RBCキャピタルのJoanna Naadr氏は「期間が1週間を越える取引については、今の処、その影響を受けていない。しかし、1週間以内の取引については、その取引は急増している。」と述べている。

決済を集中する事は、為替取引の領域の拡大に寄与している。今の処、僅か3%FXデリバティブしか、取引相手のデフォルトリスクを回避できる決済会社(クリアリング ハウス)を使っていない。クリアリング ハウスは、トレーダーにとってもっと魅力的になるに違いない。何故ならば、規制当局がFX取引の未決済に備えてより多くの担保を要求しているからである。E―トレードでは、利用者に対して銀行以外のディーラーをより容易に見つけることが出来る。カウンター パーティリスクを取り除くことによって、新規のトレーディング 企業の参入を阻むような巨大なバランス シートを持っている銀行の優位性は弱められるであろう。

トレーディング コストについても、FXの買い手はコスト低下に伴って元気づけされるであろう。故に、ユーロ最大の株式取引Eurexを持っているDeutche Borseは クリアリング ハウスを買収し、直ちにFX取引に着手するであろう。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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