2019/04/26 05:47 | 昨日の出来事から | コメント(0)
日本経済、いまだにエンスト寸前?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2012年に、日本の首相として安倍晋三が2度目の政権についたとき、かれは消費税を2倍にしようとした。当時、日本の消費税は5%であり、先進国の中では最も低かった。赤字が積み上がっていた日本の財政を立て直しする必要があった。2014年に消費税を8%に引き上げた後、一時的に回復していた日本経済の首を絞めかねないと消費税の引き上げを2度も先送りした。今回は10月に引き上げが予定されている。彼は3度目の先送りを嫌がっている。ただ、リーマン ブラザーズのような金融危機が起こった際には先送りもあり得るとした。
誰もが、消費税の引き上げが必要であることは知っている。しかし引き上げを急ぐことには様々な意見がある。前回の引き上げで経済は急激に失速した。今、足元の景気指標の弱さが前回の景気失速再燃の懸念を彷彿させている。
2~3か月前、政府は第2次世界大戦以降で最長の日本の景気拡大を自画自賛していた。しかし、先月、政府は3年振りに初めて景気の現状を、海外の景気の低迷、特に中国の景気失速を理由に下方修正した。今、景気見通しの悪さが広がっている。コンサルタント会社Pantheon Macro-economyのFreya Meamish氏は、製造業の景気指標であるPMI(purchasing manager’s index)と機械受注の両方だけでなく、短観(企業のセンチメントを測る手法)、更には住宅や小売りを取り上げ、これら全ての指標の弱さが5月20日に公表される予定のGDPに弱く反映されるだろうと指摘している。
消費税は予定通りに引き上げるべきであると唱える人がいる。Yale大学の経済学者でアベノミクスの立役者として知られるKoich Hamada氏は、労働市場が堅調であり、今後も堅調に推移することを指摘している。そして2014年とは反対に、コロンビア大学教授で元財務相のTakatoshi Ito氏は、財政赤字を出来るだけ減らすよりも、寧ろ政府は消費者に特別な給付金を付与することで消費税引き上げのインパクトを軽減する計画であると述べている。
2019年予算では、食料、ノンアルコール飲料、新聞の消費税率は8%に据え置くことで2兆円の税の軽減が図られる。 また貧しい家計には商品券が配布される。中小企業には彼らの購入に対しては5%のリベートがもらえ、個人では現金以外の方法でレストランやコンビニで購入すれば2%のリベートがもらえる。
しかし、それでも多くの市場関係者は警戒感を持っている。物価下落圧力が、日銀が目標とするインフレ率2%から非常に低い水準に留まらせている。今後、日本経済がマイナス金利を必要とするほど弱いのであるならば、財政規律を引き締める事に耐えられないことは確かである。公的債務はGDP対比およそ2.5倍あるけれども、しつこいほどの低金利は物価下落圧力が強いことを示している。
Meamish氏は「消費税を引き上げる事は本末転倒である」と述べている。日本経済は長期にわたり企業セクターに現金が積み上がる傾向が続いている。非常に頑固な企業経営者は、配当や賃金の引き上げを躊躇っている。政府が彼らに投資を促しても、その動きは非常に緩やかなものに留まっている。もし、政府が家計部門に間接的な所得増加なしに(何等かの給付金の付与をせずに)消費税を引き上げれば、家計負担はこれに耐えられない」と述べている。
もし、安倍氏が再び消費税の引き上げを延期したとしても批判にさらされることはないだろうと考える人もいる、何故ならは、その多くは金融緩和政策に依るところであり、世界経済の環境がそれを手助けしたのだけれども、彼は間違いなく日本経済を一時的に回復させたからである。しかし、同時に彼は、経済をより強固にするための改革を遅らせた。Ito氏は、企業が労働者のキャリアに合わせて報酬を増やす代わりに、巨額の退職金をやめさせる税制改革をすることで、賃金を増やし、それが消費拡大につながると提言している。 こうした施策なしでは、安倍氏は政治家の中で不自然な立場にいる事に気づく。即ち、消費税を引き上げようとすると、それが次の景気後退を引き起こすかもしれないという立場である(構造的な改革をなくしては消費税の引き上げに耐えられない)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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