2019/03/12 05:34 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ユーロ圏のインフレ動向は?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
「忍耐、初志貫徹、慎重さ」 これらは最近のヨーロッパ中央銀行の教義であり、まるで美徳について書いた初期キリスト教の本のようである。中央銀行がそう忠告するのは、デフレ圧力が世界同時危機から回復する為には時間がかかる為である。中央銀行は少なくとも今年の夏までは現行政策金利を維持するという。
しかし、この時間稼ぎのゲームが、彼らの思惑通りになるかどうか、今、試されようとしている。価格下落圧力が何年も続いてきた。そして、今、更なる景気低迷リスクが、物価回復を遅らせようとしている。3月7日に行われた政策会合では、金融緩和をすべきかどうか議論されるであろう(注:この記事は2月末に書かれています)。
1月に発表されたインフレ率1.4%は、原油価格を含むものであった。 食料やエネルギーなどの値ブレの大きな物価を除いたコアのインフレは「微動だにしない」ものであり、2015年以来1%近辺で横這ったままである。この水準は、リーマンショック 以前の2000~2007年の平均を比べても低く、中央銀行が目標とする水準2%を大きく下回ったままである。
中銀は、経済成長の上昇傾向が賃金を上昇させ、最終的には企業は物価を引き上げざるを得なくなる(物価は上昇する)と期待していた。事実、2017年から2018年にかけての経済成長は力強いものであった。2018年の第3四半期の年率換算成長率は2.5%であり、2016年に比べて1%も高水準であった。しかし、物価はそれに追随しないどころか、娯楽やレストランなどの労働集約サービスの賃金は更に下落した。 恐らく、ECBは、こうした事態は時間の問題であり、いずれ上昇すると考えたかもしれない。
しかし、足元の低い経済成長は彼らの希望を打ち砕いた。イタリアは2018年後半に景気後退入りをした。ドイツは辛うじて景気後退入りを免れている。2018年の生産の一時的な混乱が景気後退の要因になっているかもしれないが、こうした緩慢な動きは2019年に入ってからも続いている。更なる景気悪化が物価上昇を一層緩やかなものにする。ING銀行のPeter Vanden Houte氏は、ECBのスタッフが行ったリサーチから「企業家は、需要が健全になり、インフレが高くなった時、賃金コストを物価に転嫁する事を考えている」と述べている。しかし、今の処、そうした状況にはない。
投資家もまたインフレについて悲観的である。2018年後半以降、中期的なインフレ期待は低下している。中央銀行が好んで見ている指標の一つにスワップ金利に連動した中期的なインフレ指数がある。「今、この指数は1.4%であり、2014年中頃につけた2%を大きく下回っている」とゴールドマン サックスのAndrew Benito氏は述べている。一方で、ECBのヘッドマリオ ドラギ氏は「2015年以降に国債買取り政策を取った直後から、物価が低位に安定する事を懸念してこの指数が下落した」と指摘している。
当時、中銀は将来の金利上昇の目安を見る為に手法を変更した(それがスワップ金利に連動した中期的なインフレ指数)。中銀は、少なくとも今年の夏までは政策金利を変更しないことをコミットした。しかし、それは更に先延ばしされるであろう。エコノミストの中には「ECBはより長期の国債買取りを拡大するかもしれない」と指摘する人もいる。この国債買取りの仕組みの趣旨からすれば、銀行の調達が引き締まることを避けなければならない。 この買取りの仕組みは来年で終了するにもかかわらず、この夏に、ECBによって決められた銀行の法定準備金目当ての貸し出しは終了する。 このことが、今、ヨーロッパの銀行に資金調達の確保を急がせている。
来週の行動(金融政策の変更)は保障されていない。しかしECBの何人かの高官は「(金融緩和の為には)景気の低迷が今後も継続することを確信したい」とほのめかしている。例えば、ドイツ中央銀行のヘッド Klaas Knot氏は「今暫く、様子を見たい」と述べている。 しかし、金融緩和を遅らせることによるコストはインフレの見通しを更に悪化させ、インフレ期待が目標水準以下で更に長引くことにつながる。過度な忍耐は有害になりかねない(美徳どころではない)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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