2018/11/22 05:49 | 昨日の出来事から | コメント(0)
原油はトランプ氏の縄張り?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
最近まで原油は上昇して当たり前と考えられてきた。今月初め、アメリカがイランに経済制裁発動し、世界で5番目に輸出量の多いイランからの原油輸出はゼロ近くまで減少すると考えられていた。国際的な原油価格の指標となっているブレント原油は10月上旬には86ドルまで上昇して4年振りの高値を付け、一部には100ドルまで上昇するとの懸念もあった。
しかし、11月8日以降は、原油市場は弱気マーケットに転じた。ブレント価格は11月14日には66.53ドルまで下落した。アメリカの原油価格の指標であるWest Texas Intermediateは11月14日まで12日連続で下落し、この30年間で最も長い連続下落を記録した。その結果、アメリカの原油は最近の高値から20%程度下落している。
下落の理由はいくつかある。 10月にIMFが世界経済の成長の見通しを下方修正した。エマージング市場では、自国通貨の下落によってドル表示の原油価格が上昇した為にその需要に影響を与えた。しかし最近の原油市場は、これまでの伝統的な動きに加えて新しい特殊な影響によって乱高下している。それは、アメリカのトランプ大統領による影響である。
サウジアラビアが主導するOPECは原油価格の安定化を狙っている。原油価格は世界の需要を維持する為に十分な価格を確保されなければならない。 しかしその舵取りは失敗している。そこには原油産油主要三カ国があり、それはアメリカ、サウジアラビア、そしてロシアである。その内、OPECのメンバーはサウジアラビアだけである。 アメリカではシェール産業がブームであり、サウジアラビアはロシアに産油の協力を得ている。それぞれの思惑は完璧でなく、サウジアラビアの石油相Khalid al-Falih氏は、今週、「12月のサウジの産出量を日量50万バレル削減する」と述べた。ロシアの石油相は「それでも供給過剰である」と疑っている。
しかし何といってもアメリカが最も供給不安定要素を抱えている。今年、アメリカは世界最大の石油産出をしている。シェール会社は驚異的に石油を産出し、8月の産出高は前年対比23%増であった。しかシェール産業は投資家によって運営されており、ロシアやサウジのように石油相によって運営されていない。また、原油価格が下落すると、投資家がより高いリターンを要求して原油の産出を削減するかもしれない。
その頂点にあるのがトランプ政権であり、シェール ガス マーケットをあっちこっちに振り回している。
5月にイランへの経済制裁を発表した後、OPECとその関係国は、原油の増産に同意した。ロシアとサウジアラビアの産出量は過去最大まで増加した。そして11月5日にアメリカは、イランからの原油輸入に対する制裁の実効を中国やインドなどの8カ国に対して180日間の猶予を与えた。「これらの国によるイランからの輸入量はイランの輸出の75%以上を占める(これでは実質的には制裁した事にならない)」と石油リサーチ会社のSanford C.Berstein氏は述べている。
トランプ氏の貿易政策が原油の需要を減退させている。IMFはエマージング市場の失速を理由に世界経済の今後の見通しを下方修正した。 更には、アメリカとその貿易相手国との緊張の高まりが更にエマージング国経済を弱めている。「この1年で航空便や船便の輸送量が半減している」とCitiグループのEdward Morse氏は述べている。トランプ政権と中国との貿易戦争は特に原油市場に取って重要である。というのも昨年の原油増加量の40%は中国からの輸入だからである。こうした事から11月13日、OPECは来年の原油供給目標を引き下げた。
しかし、原油価格が下がったとしても、突然、上昇する可能性がある。来月、ベネズエラで開催されるOPECとその関係国の会議の後、更に原油産出が減少するかもしれない。最も不確実なのはイランであり、ベネズエラ、リビア、ナイジェリアといった国々が、世界の供給を絞るかもしれない。投資家たちは「これらの国々を「取扱注意5カ国」と呼び、7~9月のこれらの国の産油量は世界の原油産出量の12%を占め、それはサウジアラビアの産出量よりも多い。
更には、トランプ氏が、それまでの流れをひっくり返す可能性が常にある。例えば、中国との貿易を止めたり、イランに対する制裁を更に強めたりするかもしれない。あるいは、単にツイッターに書き込むだけかもそれない。11月12日、彼は、ツイッターでOPECは原油生産削減を避けることを要求した。これを受けて原油価格は下落した。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。