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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/08/28 06:03  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

トルコの混乱


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思いと思います。

非宗教的でかつ民主主義的なトルコは、最終的にはEUに加盟し、西側として知られている豊かな国々の仲間入りをするとかつては考えられていた。しかも、トルコは、つい2~3年まではエマージング市場に投資をする投資家にとって魅力的であった。

しかし、そうした日々は遠くに過ぎ去ってしまった。政治的には、トルコは西側から遠のき、驚くほどイスラム的になり、NATO同盟と対立し、エルドガン大統領の下、明らかに独裁的な国に変貌してしまった。経済政策の独立性は失われてしまった。高い経済成長は海外からの借り入れに依存し、外国通貨による企業借り入れは2009年以来2倍に膨れ上がった。 高金利政策は高いインフレを抑えるよりも寧ろその原因であると信じているエルドガン氏は、中央銀行の行動をあからさまに妨害してきた。

こうした傾向が頂点に達した時、トルコは通貨危機に直面し、馬鹿げたことにテロ行為をしたとして捕らえられているアメリカの牧師Andrew Brunson氏の解放を拒否した事からアメリカの経済制裁を受けて経済は急落している。更にトランプ大統領がトルコからの鉱石の輸入禁止宣言をしたことで事態は更に悪化している。 トルコ リラは、今月だけで25%も下落し、インレフは更に加速し、その結果、外国建て債務が増加し、トルコの銀行システムの健全性が損なわれている。アメリカとの関係は極めて悪化し、エルドガン氏はトルコ経済の問題を外国の敵の仕業に仕立て上げ、アメリカの車、酒、更には化粧品にすら報復関税を課した。

トルコ危機は3つのタイプのリスクを持っている。 一つは、エマージング市場にとって、神経質になった投資家が、こうした動きが広がることでエマージング市場から撤退するかもしれない。2つには、トルコ経済が酷い景気後退に陥るかもしれない。3つ目には、西側にとって、トルコに対するボロボロになった債券がデフォルトするかもしれない。 それぞれのケースにおいて、事態はどれ程悪化するであろうか?

始めに、最も事態が悪くならないニュースから始める。 トルコ リラの急落が、トルコのあまりに低い貯蓄率、巨額な経常赤字、外国からの債務や高いインフレを含めた混乱が原因となり、他のエマージング国通貨がトルコと同様、あるいはそれよりも悪化する可能性である。確かに、南アフリカ ランドは急落し、インド ルピーは今週最安値を更新した。 アルゼンチンは、今年に入って既に通貨危機に直面し、政策金利を何度も引き上げている。トルコに貸し出しをしている銀行の株価は下落した。

エマージング市場の環境は、金融政策の引き締めによって米ドルが上昇し、中国経済に対する懸念が高まる中、以前ほど良くない。 しかし通貨危機が他のエマージング市場に広がることはなさそうである。主要エマージング国の中で、唯一IMF病棟の中にいるアルゼンチンとエジプトだけが、インフレ率が2桁であるが、トルコ程、経常赤字が大きいエマージング国はない(既に外国との貿易が途絶えているパキスタンが別であるが)。他のエマージング国には、まだ手を打つことが出来る政策余地がある。もっともトルコに似た問題を抱えている国(アルゼンチン)は、現在、諸問題に積極的に取り組んでいる。アルゼンチン中銀が政策金利を引き上げている事実が、事態収束の源になっている。

トルコにとって、経済がこうした事態に陥った時、なすべき青写真がある。それは、通貨下落とインフレを食い止める為に政策金利を引き上げ、IMFから緊急支援を求め、投資家を友好的に繋ぎ止めておくことである。アルゼンチンは、今年の夏の始めにこれを行い、危機の芽を摘み取った。

トルコは、銀行システム改革や、投機的なリラ売りを困難にさせ、カタールのように投資家に投資の約束をするといった危機の火消しをしても、それ以上の事は何もほとんどしておらず、米ドルを供給するもののリラそのものの信頼回復には至っていない。 高金利に対する抵抗や、何らかの借り入れを必要とするIMFへの要請に背を向け、アメリカを反故にするエルドガン氏の抵抗が、トルコが事態を前に進める為の機会を失っている。この点が、事態を収拾できるか、それとも壊滅的な経済崩壊になるかの違いであり、デフォルトが広がるか、更には銀行が潰れるかの分かれ目である。

エルドガン氏は、物事が見えていないのかもしれない。 彼の独裁スタイルは、一層悪い政策を生み出している。彼は、彼に抵抗すべき勢力の力を削いできた。本来、独立し、かつ官僚的であるべき中央銀行は、今は狂気じみた見解を持つリーダーに従っている。財務大臣は大統領の娘婿である。本来、エルドガン氏の過ちを指摘すべきメディアは余りに恐れをなして、彼の陰謀に満ちた理屈を繰り返して発表しているだけである。正しいニュースから分離された事で、多くのトルコ人は、諸問題は西側の仕業であると信じている。彼を妨害する人がいないので、エルドガン氏は、彼のやりたい放題の政治に耽っている。

通常であれば、トルコの西側同盟国は、エルドガン氏の政策変更の手伝いをすべきかもしれない。しかし、ヨーロッパの国々は彼を怒らせることを怖がっている。もし、そうなれば、彼はシリアからヨーロッパに流れ込む難民のゲートを開けかねない。また、トランプ大統領はトルコのリーダーと同様に愚かにも(人々の前で)親指を上に向けて自己を誇示する競争をしている。お互いに貿易で威嚇し、愛国心からくる国民の怒りを掻き立てて他国をかき回している。両者とも自分を弱く見せることを畏れているので、(たとえ間違っていたとしても)事態を後退させない。

短期的には、トルコは現在の危機より一層苦しむことになるであろう。国民の多くは、物価が上昇し、一層貧しくなることを感じている。 一方で、アメリカも、また、長い目で見れば苦しむことになるであろう。トルコは、地政学的にアジアとヨーロッパと中東にまたがる重要な位置にある。もし、トルコが西側とあまりにも酷い決裂をすると、ロシアや中国に接近するかもしれない。トランプ氏が、Brunson氏の解放に圧力をかけるのは正しい。しかし、それに対して関税をかけるのは間違いである。貿易に関する基本的なルールは、それぞれの国に依存するものであり、関税を見境なく相手を攻撃する為の武器として使うべきではない。更には、アメリカ大統領がすぐに反発するNATO加盟国と論争をすると、NATOの結束が弱まってしまう。

トランプ氏とエルドガン氏は、かつてエルドガン大統領がロシアやアメリカ、北朝鮮に対して行ったように、お互いに勝利宣言して攻撃を収束する為にメンツを立て合う方法を探す必要がある。そうすれば、IMFを含めて西側からトルコを地獄から引き戻す余地が出来るであろう。もし、その国のリーダーが、何故、問題があるのかを理解しないのであれば、その国を助けるのは困難であるだろう。しかし、その一方でトルコは非常に重要な国であり、見捨てることは出来ない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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