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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/08/22 05:51  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

中国の負け?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

8月5日のトランプ大統領はツイッターに「輸入関税は「絶好調:big time」に機能している」とコメントし、アメリカのメディアは、一斉に反発している。 一方で、中国では、各新聞は慎重な姿勢を取って中国の主要紙は、彼のツイッターのコメントを載せていない。彼の主張が尤もだと思われる1つとして、この4か月で中国の株価は27%も下落したが、それはやや過剰反応し過ぎである。 しかし常に自己正当化する中国政府広報官は、何故、こうした状況に甘んじているのであろうか? 中国高官は、中国株は急落し、そうした事態が更に深刻化する事を望んでいない。

そして、これはアメリカと貿易戦争を深刻化させた中国の一連の「無様さ」の一つに過ぎない。人民元は4月以降8%下落して1年振りの安値である。 貿易黒字も急激に減少し、2018年上半期の経常収支はついには赤字となり、過去20年の貿易収支と様変わりである。更に、アメリカが2014年以来、最も景気拡大している時に、中国経済は失速している。トランプ大統領が自らの行いは正しいと信じ、中国の投資家が苛立つのも無理はない。

更に中国に取って不都合なことは「鞭(むち)ひも効果:振った鞭が自分にあたる事」である。 それまで、中国高官や経営者たちは、(自らの)優れた技術力を信じていた。民間の間では「トランプ大統領が、中国がアメリカからの輸入を増やすことで、(貿易戦争を)妥協させられる」と信じていた。 しかし、今やこうした考えは間違いであったように思われる。中国が、アメリカから天然ガスと大豆の輸入を増やす取り決めは瓦解した。中国の高官は不安におののいている。もし、アメリカがZTE(中国の巨大通信会社)へのコンピューター チップの売却制裁を維持すれば、この会社は倒産するかもしれない。こうした思惑が、景気により一層暗い影を落としている。ファンド マネージャー達は「アメリカは(中国と妥協点を探る)取引をしようとしていない。彼らは我々を締め上げている」と述べている。

貿易戦争の裏には、更に不愉快な現実がある。アメリカが中国から多くの物を買い、中国もまたアメリカから物を買って以来、アメリカは中国への輸入関税によりその焦点を合わせて来た。これまで長きに亘り議論されてきた貿易不均衡は、今や、非常に厳しい現実に直面しつつある。トランプ大統領が、9月から200bnドルの中国からの輸入品に25%の関税をかけることを貿易担当に指示したが、実質的にはその対象は250bnとなりが、今後の関税対象品目はその2倍の余裕がある。一方で中国は8月3日に報復としてアメリカの輸入品60bnの報復関税を発表し、実質的な対象品目は110bnに登るが、今後の関税対象品目にもう余裕はない。

中国は、こうした事態に対応する別の対抗措置を持っている。それは、アップルからスター バックスに至るまで、アメリカの大金持ち企業の中国でのビジネスを妨害する事である。しかしこれにはダウンサイド リスクが伴う。中国政府が中国経済を介入してインチキな法律違反を科すと海外からの批判が再燃しかねない。更に中国のこうした介入は、関税報復と違って、事前にアナウンスすることもなければ時間がかかり、その影響が出るのに時間もかかる。

更に、今回の貿易戦争のタイミングは、中国に取って最もタイミングが悪い。過去2年に亘り、中国政府は過剰債務問題に取り組んできたが、ここにきてようやく貸し出しが減少し、経済成長も失速してきた。政府は、今回の貿易戦争に対応する為に、これまでの貸し出し引き締めのスタンスを放棄する選択肢を取る事も可能である。しかし、それでは、今までのバランスシート圧縮成果が水の泡になる。今まで(中国政府が)ここに手を付けていないことが、その証左である。7月31日の共産党政治局の会合で、中国のリーダー達は、外部環境の変化に対して明確な変更を行うことで経済成長を支える事が最優先であると同時に債務をコントロールする努力も訴えている。これに対して、更なる金融緩和を期待していた投資家たちは失望した。

現在、中国の将来見通しに対して懸念材料が多い。しかし、マーケットは不必要までに悲観的である。ここ2~3週間の動きから見えてきた1つの結論は、中国政治家が、「貿易戦争が本当である」という事実を受け入れ、経済にクッション(緩和政策)を与え始めた。ゴールドマン ザックスのアジア経済のヘッド Andrew Tilton氏は「6月中旬以来、実行為替で6%人民元が下落した事によって輸出が伸びる事は、最初の50bnにアメリカの関税打撃に対して「概ね」妥当なことである。そして、更なる200bnの関税ダメージに対してもある程度、人民元安によって緩和される」と述べ、更に「中国は財政政策にシフトしつつある。政府は、地方の都市がインフラ プロジェクトに容易に取り組めるよう金融を緩和している」と付け加えている。また、ある政府アドバイザーは「我々は投資よりも寧ろ消費を一層促すような大きな刺激策を議論している」と述べている。

貿易戦争による対立は、来年にかけて更に変化が起きるかもしれない。中国は金融緩和に転換しているので、貸し出しが上向くに違いない。一方で、アメリカは、去年の減税とばら撒きによって景気循環サイクルで現在ピークに差し掛かっている。 リサーチ会社Oxford Economics のLuis Kuijis氏は「株価の調整局面は、アメリカ経済に対する過信と中国の自信が消滅する事によって引き起こされるのかもしれない。そして、その市場の反応は誇張されるかもしれない(オーバー シュートするかもしれない)」と述べ、「貿易戦争が解決されないならば、この考えが試される(実際に起きる)可能性が十分にある」と語っている。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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