2018/08/14 05:50 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ゼロ コストETF!?
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
1975年以来、投資運用会社Vanguardによって最初に起債された株式インデックスに連動する小口投資ファンドは実にちっぽけなものであったが、こうしたパッシブ ファンドは今や業界全体の手数料と収益を枯渇させている。 8月1日に別の投資運用会社Fidelity によって起債されたtwo-zero-cost tracker fundの手数料は、行きつくところまで行ってしまった(ゼロ コスト)。ボストンをベースにするこの企業は業界で4番目の規模を誇り、その運用資産は2.5兆ドルである。このゼロ コスト 投資(投資家の負担するコスト(手数料)が実質ゼロ)によって、この業界に激震が走り、既に大きな地殻変動が起きている。
Fidelityの競争相手は直ちに打撃を受け、世界最大の資産運用会社であり、かつ最大のパッシブ運用ETFS(Exchanged Traded Funds)であるBlack Rockの株価は、投資家が今回の動きを織り込んで(Black Rockの将来の業績悪化を見越して4.7%下落した。また、ETFファンドでは4番目に大きい運用会社Invescoの株価も4.2%下落した。更にETF運用で業界3番手と考えられ、これに関連した運用を行っているState Streetの株価も1.2%下落した。
同業他社のインデックス連動ファンドやEFFSの手数料は既に非常に安いものになっている。VanguardやCharles Schwabのインデックス 連動ファンドの手数料は、今回のFidelity のゼロ コストに近く、それぞれ0.14%と0.009%に過ぎない。ETFSの手数料に至っては更に安く、それぞれ0.04%と0.003%である。インデックス運用では、運用する資産が大きくなればなるほど単位当たりのコストが下がるので、規模の経済が働く。
新しいファンドでは如何なる手数料も取ることが出来ないので、Fidelityは株の売りポジションを保有している人に相当量の保有株を貸し出しする事で利益を上げなければならない。また、これによって既存のファンドから新しいゼロ コスト ファンドへの移行が進むかもしれない。業界では既存のファンドをより魅力的に合する為に手数料の3分の1を引き下げ、これによって投資家は年間47mnドルの手数料を削減できた。投資運用会社は、手数料を下げる一方で金融アドバイスのようなもっと儲かる商品を買ってもらえる上顧客が見つかることを期待している。
Fidelityが最初にゼロ コストにしたのは、やはり驚きに値する。 その評価は株の投資家から武勇伝になっている。また、今回の動きによってアクティブ運用をする会社の株価は大きくダメージを受けている。過去10年以上に亘り、アメリカで株をアクティブに運用しているファンドの87%はそのベンチ マーク(インデックス)対比で アンダー パフォームしてきた。そして、2017年現在のアクティブ 運用会社の平均的な手数料は年率0.57%である。
また、アクティブ運用会社は、パッシブ 運用会社による合併に直面してきた。アメリカの運用会社 JanusとAnglo-Australianの合併、更には、イギリスのAberdeen InvestmentとStandard Lifeの合併がある。しかしパッシブ 運用への実態を見るのは難しく、恐らくアメリカの株式ファンドの半分以上は既に移行した模様である。Fidelityの今回の動きは、ただでさえ巨大になっているパッシブ 運用の会社同士で合併する事が更に加速する事が見込まれる。いずれにせよ、株を売っている人に株を貸すことで一定の収益を確保する為にはそれなりの規模が必要である。
近年、Fidelityは、ライバルのビジネスをパッシブ 運用に向けさせ、更に手数料を引き下げることでビジネスを奪って来た。そこに更なる一撃が今回の動きである。6月にパッシブ 運用への流入が5.6bnドル起こり、同時に2.6bnドルのアクティブ 運用からの流失が起こった。ゼロ コスト ファンドは、こうした動きを一層加速させるであろう。
アセット運用会社の価格競争は既に熾烈である。誰がこれに立ちはだかることが出来ようか。Fidelity のライバルがFidelityから手数料を奪いとることを想像する事は殆ど不可能である(何故ならば、Fidelityの手数料は既にゼロだからである)。 現在では一般的な口座手数料が無料であるように、ひとたび無料のものが供給されると、再び手数料を徴収し始めるのは非常に困難である。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。