2018/08/07 05:51 | 昨日の出来事から | コメント(0)
投資は、単純が一番!?
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事ありましたのでご紹介したいと思います。
Benjamin Grahamは、安い株を買うことを仕事とするバリュー インベストメントの父と考えられている。また、彼は、株を常に安く買おうとしてならない投資の父と述べられていいのかもしれない。彼の著作「知的投資」の中で、Grahamは、典型的な2つのタイプの投資家の違いを述べている。積極的な投資家は株を安く買う事に時間を割き、それに労力を費やしている。一方で、消極的な投資家は、静かに人生を送りたいと願っている。彼らは、単純に主要株式を分散して買っているだけである。
現在は、低コストで買えるインデックス化されたファンドの出現によって、投資知識のない投資家でも容易に手に入れることが出来る。それでも、彼らは、所謂、資産配分に関する決断をする必要がある。つまり、「手元資金の内、どれくらいの割合をリスクの高い株に投資をし、どれくらいの割合を安全な債券に投資をすべきか?」という判断である。 期待収益、ボラティリティ(価格変動)つまり投資家がどの程度の変動に耐えうるか、あるいは投資家の年齢やその仕事の内容によって資産は割り振られる。有難いことに、Grahamの答えは単純であり、株と債券を半々に分け、マーケットの値段次第で、その割合を調整する事を主としている。
このアプローチの長所は(実際の処は多くの年金ファンドでも好まれているのが60対40の割合で株式を保有するが)、それは「単純」という点である。複雑な方法よりも単純に固定する方がより収益機会が多い。正しいポート フォリオの割合を決定する事が資産割り当ての最も重要なことではない。より重要なことは、どんな時も決めた資産割合に固執できるかどうかであり、定期的にあなたのポート フォリオをリバランス(調整)出来るかどうかである。
リバランスは、多くの良い点を持っている。 始めに、リバランスによってポートフォリオを過度に危険に曝さないようにし、また、逆に安全になり過ぎないようにする。もし、株が上昇していれば、債券は売られている。その際、50-50のポート フォリオは70-30に資産が変わっている。タイミングよくリバランスする事は、高くなった株を売り、発行価格に近づいた債券(安くなった債券)を買うことになる。また、これは同時に、投資の価値(質)を変更することも考慮に入れている。対象証券が安いという事は、より高いリターン(収益)が期待できることを意味する。価格が大きく上昇するという事は、(期待できる)リターンが下がることを意味する。投資家は、より安い資産を多く持ち、恐ろしい資産(下落する資産)をより少なく保有すべきである。リバランスはこの点について有効である。リバランスは、期待収益が落ちている資産を削減し、投資家にとって都合のいい安い資産を保有する事を要求する。
こうした事は、多くのマーケットの知恵に反すると思われるかもしれない。「損切りをして、より儲かるものに乗っかる」は、マーケットの価格変化を短期的に追及するヘッジ ファンドの原則である。 リバランスはその反対である。リバランスでは、儲かっているポジションを売り、足元損をしている人のポジションを買うことになる。
こうした2つのアプローチは、未だ和解することなく対立したままである。
次に、ドルが売られるだろう、あるいは原油が上昇するであろうといった短期的な「directional(方向性を追求する)」トレードは、非常に投機的である。こうした取引には、その判断が間違っていることも十分にあり得る。だから、損をすれば(間違いとわかれば)、すぐに損切りをする。もし、予測が正しく、価格の方向性が新しい方向に向かうならば(高値を更新するならば)、彼らは、そのポジションを保有し続ける。 リバランスは、これとは反対に、長期的に保有する。彼らは、マーケット価格の極端な上昇は最終的には調整される(売られる)ことに賭けている。
Balck RockのAndrew Ang氏は、リバランスがどのように機能しているかを以下に示している。1926年から1940年の15年間には、1929年の世界恐慌がこの期間に起こっている。 1926年1月に1ドルの株式投資をした株は、1940年には1.81ドルになっている(この間、アップ ダウンはあったが)。債券も好調であった。1926年の1ドルの債券投資は、1940年までには2.08ドルとなった。1926年に60-40の割合で保有したポート フォリオは、1940年まで何もしない状態で1.92ドルであった。 これを四半期ごとにリバランスすると2.46ドルになり、債券、株共に何もしないポート フォリオに比べてパフォーマンスが良くなった。リバランスは、株が高くなった時に売り、株が安くなった時に買う事で収益機会を確保している。
しかし、これを実行するのは容易いことではない。価格が大きく下落している時に、資産を買う事は本能に反している。しかし、明快で単純な投資戦略を持つことが手助けになる。これは、個人の訓練を要する他のゲームでも同様である。「スイミングだろうが、テニスだろうが、ランニングであろうが、それが問題なのではない。 本当に重要なことは、決められた時に実行する習慣を持っているかどうかである」とAng氏は述べている。 もし、マーケットが静かな時にリバランスする習慣が確立されるなら、マーケットが嵐の時にリバランスする習慣を身に着けるより、ずっと容易であろう。では、どのくらいの頻度ですべきか?それは「四半期ごとに、手帳に日付を入れておくのが一番いい」とElm partnerのVictor Haghani氏は述べている。 インデックス ファンドは、非常に安いコストでリバランスできる。しかし多くのその他のリバランスは一定の待機資金(現金)を比率の下がった資産(安くなった資産)に投入する事でなされる。
しかし、だれでもこうした事が出来るわけではない。リバランスは、バブルと崩壊を繰り返すサイクルに対して実に有効である。異なった資産配分は、違った収益結果を辿る。しかし、本当に重要なことは、投資のルールそのものではない。それは、あなたが、投資のルールに固執できるかどうかである(ルール通りでできるかどうかである)。だからこそ、売買ルールは(着実に実行する為にも)単純でなければならない。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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