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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/05/25 05:08  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

トルコが魅力的投資からジャンクに落ちた経緯は!?


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

多くの有名なヘッジ ファンドは、まさに物事が悪化しようとする処で賭けてくる。エンロンを思い起こしてほしい、あるいはアメリカのサブプライムローン債の苦い経験を。しかし、本当にいいトレードとは、「ある教授」によれば、それは最悪の事態から良くなろうとする時に賭けることである。20年前、彼がトルコを訪れた時、トルコの1年国債の利回りは100%を越えていた。彼は、匿名ファンドマネージャーとしてSteven Dronyの著書「Invisible Hand:見えざる手」の中で、「明らかに、当時の価格は、ミス プライシングであった」と述べている。その後、IMFはトルコの早期の経済改革を認可し、これを受けてT-Billの価格は急上昇し、1年国債の利回りは40%まで低下した。

その後、トルコの(景気循環の)車輪が1回転し、今やトルコは買い手よりも売り手にとって魅力的になっている。トルコ リラは急落し、ジャンクから、更に悪いジャンクへ転落しようとしている。その理由の一つには、外国からの資本調達に対する懸念がある。貿易全般を表すトルコの経常赤字は、世界で最も大きい国の一つであり、このギャップを埋める為にトルコの銀行や大企業は大量に借り入れ、その多くは外国通貨を主として調達している。クレジット レーティングが傷つくことは、彼らの債務が完全に返済されない可能性を示唆している。

トルコは、エマージング市場ではモラルのある国として魅力があった。2000年初期の健全な政治運営によって所得が増加したが、最近の野放図なまでの多額の借り入れによって、近い将来、厳しい景気後退の罰を受けなければならない。トルコは、まだ危機の淵に来ていないかもしれないが、しかし、それを回避続ける事は至難の業である。

では(危機に陥った後)、スマート マネーが再びトルコに入ってくるとすれば、そのきっかけはどういうものであるかを考えてみたい。教授マネー(スマート マネー)を呼び込んだIMFの救済は、確かに事態の変化に対する中間地点(きっかけ)であった。2001年に、前の世界銀行高官であったKemal Dervis氏がトルコの経済大臣になった。彼は、IMFと交渉して、多額の長期ローンを組むことで、窒息しかけていたトルコ経済に息を吹き込んだ。そして中央銀行により独立性を持たせ、財政赤字の肩代わりにファイナンスさせることをやめさせた。更に、リラを変動相場制にした。しかし2003年にRecep Tayyip Erdogan氏(現大統領)が当時の首相になった時、政府はこれまでの政策を凍結した。

その後のトルコ経済は繁栄したが、非常に大きな弱点が残った。それは過去の高いインフレに見舞われた多くの国と同様に、トルコの貯蓄率は低かった。景気が上向いている時、景気上昇を支える為により多くの外国資本を必要とした。トルコの対外債務は着実に膨らんでいった。事態を更に悪化させたのでは、2000年代初期のそれまでの政策の正当性に疑問が投げかけられた。殆ど多くの人々は、トルコのインレフが上昇するのは、短期金利が低すぎるからと考えている。 しかしErdogan氏は、高い政策金利が高いインフレの原因であって、高い政策金利が高いインフレの対策にならないと信じている。彼は、中央銀行に対し、彼の大雑把でいい加減な政策が成功するように脅しをかけている。

これは傲慢そのものである。彼がこの考えを前に押し進める時、彼はあたかもそれを信じているかのようである。この点にのみならず、彼のやっている事は「経済ポピュリズム」そのものであり、それは1990年代のSebastian EdwardやRudiger Dornbuschを彷彿させる。こうしたアプローチは財政赤字やインフレが経済成長の阻害要因になることを過小評価もしくは否定している。1970年代から1980年代の南アメリカの人気取り政治家は公共投資のバラマキの為に紙幣を印刷しまくり、その結果、南米危機が起こり、ようやくこうしたバラマキ政策の裏には大きな阻害要因があることに気付く。 ハーバード大学のDani Rodrik氏は「トルコは、こうしたテーマ(財政赤字やインフレが経済成長の阻害要因になる事)における典型的な例である」と述べている。トルコは、(本来必要とする)資本調達を行わない代わりに、経常収支の赤字を民間の借り入れに頼っている。

過去10年の低いインフレの下では、借り入れが容易であった。また、世界的な金余りがトルコに対するクレジット ラインを容易にした。これによって、トルコは今まで長きに亘り、危機回避をすることが出来た。しかし外国からの投資が永遠に続くことはない。アメリカの債券金利の上昇や米ドル上昇によってこうした投資が終わろうとしている。トルコは、過去と同様のアメリカの金融引き締めの痛手をまだ受けていないように見える。恐らく、今は、かつてと違って借り入れ書類がよりしっかりしているからかもしれない。

もし、トルコが、今後も借り入れが容易であり続けるならば、これまでの教訓にないことであり、そうなると、もはやエマージング マーケットに、これまでの経験則が当てはまらない事になる。原則的には経常収支は均衡する方向に力が働き、その多くは外国からの借り入れをしなくてもいい方向に動く。 しかし、現在のトルコの2ケタ台のインフレは、世界的に一桁のインフレが常態化している現在にあって突出している。エマージング市場における金融政策のアプローチは、幾つかの例外があっても厳格までに原理原則通りである。だからこそ、20年前、「ある教授」が非常にまれな現象(1年物国債の利回りが100%を上回った)に賭けた(資金を投じた)のである。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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