2018/05/15 05:11 | 昨日の出来事から | コメント(0)
アルゼンチン危機、再燃か?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
ぱっくり口を開けた多額の財政赤字、しつこいインフレ、通貨安、短期金利急上昇、外貨準備金の減少、そしてIMFに頼み込む。 今、アルゼンチンは典型的な新興国市場危機の中に入り込もうとしている。政府は、今週、機関投資家やアルゼンチン国民が心配しているように、IMFに財政支援を慎重に検討する決定をした。
アルゼンチンは、過去の危機を全く同じことを繰り返しているのではない。現在の政府は、過去の人気取り政権が行ったことよりもかなり改革をしている(特に金融に関しては)。 しかし、危機であることには変わらない。多くの人々は、こうした危機が他の新興国市場にも広がるのではないかと心配している。 確かに、その中のいくつかの国は不安定な動きをしているが、幸いなことにそれは限定的である。
アルゼンチンの現在のインフレ率25%は、昔の世界経済のインフレに属しているように思われる。 僅かに、エジプト、ナイジェリア、トルコぐらいが高いインフレ率であり、これらの国のインフレは2桁である(ベネズエラは別の惑星の話)。ブラジルや中国やロシアは、政府の満足する範囲にインフレが収まっている(とはいえロシアは違った意味で別の世界であるが)。タイは逆にインフレが低すぎて政府は満足していない。いずれの国の中央銀行は、今アルゼンチンが戦っているインフレ戦争に勝利している。
ブラジル、エジプト、インドを含めた新興国経済の幾つかは、ある意味で、アルゼンチンよりも悪化しているところがある。 IMFによれば、ブラジルの今年の財政赤字は、GDP対比で8%を越えており、アルゼンチンの財政赤字は5.5%である。他の国の中にも財政赤字も悪化している国があるが、その一方で、民間セクターは十分にその範囲の中に納まっている。その理由としては、その国の財政赤字がそのままその国の経常赤字となっていないからである。
多くの新興国は確かに多くの債務を抱えているが、彼らはアルゼンチンのように旧来型の他国通貨で借りる必要がない。 IIFA(Institute of the International Finance)によれば、アルゼンチンの公的、民間の債務の約64%はアメリカドルや他の通貨で調達されている。主な新興国の中では、トルコが54%であるが、他の国ではタイが17%であり、ブラジルは16%に過ぎない(為替の影響が少ない)。
低インフレで、経常赤字が緩やかに増大し、外国通貨の債務が限定的な状況は、今日のアルゼンチン ペソとは明らかに違っており、過去の危機的状況とも違っている。とはいえ、世界的な金融の流れが、ペソに与えたような影響から完全に逃れているわけではない。 全ての新興国は(主要新興国も含めて)、FRBの動向を注視しなければならない。 (政策金利の引き上げによって)アメリカ国債の利回りが上昇し、米ドルが他通貨対比で強含むからである。多くの場合、新興国の金利水準は長期的にはアメリカの中央銀行の政策に敏感に反応する。
しかし、現在の彼らの長所(他国通貨債務が少ない点)は、新興国により多くの選択肢を提供している。借り入れコストがあまりにも高くなるようであれば自国金利を下げることが出来る。また、資本が流出しても、経済が混乱しない程度に通貨安を容認することが出来る。それは、偏に一時的に輸入価格が上昇しても、それをそのままインフレに反映する心配もなければ、自国通貨が安くなってもドル建て債務(借り入れ)の調達が不可能になる心配がないからである。
アルゼンチンと他の多くの新興国の違いは明確である。アルゼンチンは、2009年にインデックス提供者であるMSCIによって「開拓市場」としてインデックスに追加された。しかし、アルゼンチン経済は、インフレや財政赤字、ドル建て債務増、そして通貨安に苦しみ、他の多くの国が新興国のレッテルを掲げる以上に、より忠実に「新興国」を再現しているようにみえる(かつての新興国危機を再現しているのはアルゼンチンだけ)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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