2018/05/08 03:43 | 昨日の出来事から | コメント(0)
投資家が金融テクノロジーを正しく使う方法は?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
テクノロジーが金融の世界を変えつつある。消費者はオンラインで銀行に預け、保険を買う。彼らはテクノロジーを使って年金や他の投資ポートフォリオを管理する。 しかし、テクノロジーはリターンを改善出来ているだろうか? 答えは、それを賢く使った場合にのみ、リターンを改善できる。
もし、より安いコストでできるトレードがあれば、それは取引コストを削減し、長い目で見れば、大量の売買コストを削減できる。 また、テクノロジーは、ファンド マネージャーに株価指数の代用物(ETF)を提供し、 しかも1年に1%程度の(安い)手数料で広範囲のポートフォリオに分散することが出来る。
しかし、容易に様々なポートフォリオを利用できることが、とんでもない誘惑に駆り立てる。今、全世界で約7,400ものETF(Exchange Trade funds)がある。これらのファンドは単に「買って保有するだけ」の投資家だけが利用しているだけではない。アメリカのマーケットで取引されているファンドのトップ20の約半分はヴァリュー トレード(割安銘柄を買い、割高銘柄を売る事に特化したファンド)である。
しかも、トレードできるからと言って、必ずしもそれを買うべきという事にならない。 中には、ベトナムの中小企業に特化したファンドもあれば、相場のボラティリティを売買するファンドもある。また、50歳を過ぎた男性が夏の暑い日に袖をめくり、更にはとんぼ返りをしてまで頑張って売買するものでもない。また、テクノロジーを駆使する事が必ずしも賢明であるという事を意味しない。
プロの投資家の中には、ポートフォリオを長期に保有するのではなく、絶え間なく超高速で売買をすることが美徳であると考えている投資家もいる。彼らは、大量のデータを使ってそれぞれの株価の僅かな違いの見つけ出し、それを他の誰よりも早く売買できるようにコンピューターを利用する。これは「ダーウィンの進化論ビジネス」と言われ、常に彼らの売買装置を改良し、より競争力のある優位性を数式化するものである。
しかし、一般的には、投資家の多くは、超高速売買であろうと他のストラティジーであろうと、マーケットのインデックスを上回ることは出来ない。代わりに、普通の投資家はテクノロジーを本来の市場の動きを確認する為に使うべきである。
何よりも多くの投資家は、自らが長期的に必要としている金額に見合う貯蓄額を過少評価している。 この中には、将来の投資リターンを計算する上で前提となる寿命、インフレなども含まれる。また、別の問題として、通常の人は、長期に亘る貯蓄や将来の不確実性よりも目先の目的の為にお金を使う傾向がある。
いずれにせよ、こうした近視眼的な考えは様々な問題を生む。 アメリカの40~55歳台の人々を例にとると、彼らの個人年金の平均値は1年で14,500ドルである。 金融危機以降、中央銀行が取った低金利
政策は、個人の貯蓄をやめさせて投資に向かわせ、そして世界経済を再生させるためのものであった。
悩ましいことに中央銀行がこうした低金利政策を取ると、貯蓄で将来の目標リターンを得るためには、より多くの金額を貯蓄に回さなければならないのである。 結果として、彼らは更に貯蓄して、消費を一層控えることになる。
テクノロジーは次の問題解決に役立つ。それは正しい統計モデルが個人投資家に対して将来のリタイア後に必要となる年金額を提供してくれる。つまり、どんな投資が一定の根拠で投資リターンを生み出すかを教えてくれる。また、テクノロジーは、そうした投資が順調にその目標に向かって推移しているかも提供してくれる。もし、投資ポートフォリオが目標水準を下回るようであれば、投資家は、更に資金を回すか、リタイアの時期を延ばす計画を立てることできる。つまり、現状を知ることで、将来の行動を変更できるのである。
2つ目は、テクノロジーは、(コストのかかる)超高速売買を避ける方法(戦略)を選ぶことに役立つ。しかし、投資家は次の2つのどちらかの罠に陥りやすい。 一つは20歳台に買った裁定取引をしてそのままにしておくか、逆に自らのポートフォリオを頻繁にいじくり回すかである。人々の多くは、流行のセクターや、人気のある投資信託に入れ込み過ぎる。あるセクターが人気であるという事は、既にこのセクターの価格が上昇しており、歴史的に割高になっている。また、人気のある投資信託は既に過熱している。というのもこうしたファンドは過去のパフォーマンスが良かったからからであり、今後もパフォーマンスがいい確証はほとんどない。
その一方で、(テクノロジーを使って)自動化されたシステムは、確固たる信念を要求される。一つのアプローチとして、アセット アロケーション(割り振り)を設定するとする。例えば、20%を国内株式、40%を海外の株式、20%をインフレリンク債券、残りの20%を社債とする。このポートフォリオでは、1年毎、あるいは、アセット アロケーションの割合が中期的な目標設定から外れた時に自動的にリバランス(再分配)する。こうしたアプローチは、買った資産が下落した時(あるいは安くなった時)にメリットがある。あるいは、値段が上昇した時に売るメリットがある。
短絡的に投資家はテクノロジーを「ダイエットの薬(短期間で効果が出て減量できる出る薬)」と同じように扱うべきではない。 代わりに、投資を長期的に成功させるための行動(運動を多くして食事を控える)を喚起してくれる道具として見るべきである。 Fintechは金融フィットネスで常に身に付けているスマホの万歩計などの道具の一つとして考えられるべきである。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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